孫の結婚式代や住宅購入費を支援したいという両親。「毎月10万円ずつ渡すから大丈夫!」と言うのですが、贈与税はいくらかかりますか?
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
年間110万円を超えると課税対象
Aさんご両親のお気持ちは素晴らしいですね。ただ、贈与税について正しく理解しておく必要があります。贈与税のポイントを簡単に整理しておきましょう。
■年間110万円までの贈与は非課税
年間110万円までの贈与に対しては、「基礎控除=110万円」の範囲内に収まりますので、贈与税はかかりません。
■年間110万円を超えた部分に対して金額に応じて課税される
年間110万円の超過部分に応じた金額については、贈与税が課されます。税率は金額に応じて10~55%です。
Aさんのお話ですと、毎月10万円では年間110万円を超えた10万円部分について贈与税が課せられる可能性があります。この場合は10%の1万円です。
年間110万円でも総額1000万円だったら? 注意ポイント
年間110万円に抑えておけば、10年間続けても課税されることはありませんが、贈与総額について注意しておきたいポイントを確認しましょう。
条件1:「毎年独立した贈与」とする
贈与税は「その年に行われた贈与」に課されるため、毎年独立した贈与として行う必要があります。例えば、「10年間で1100万円を贈与する約束」とみなされた場合、一括贈与と判断される可能性があり、課税対象になるリスクがあります。
条件2:贈与の事実を明確に記録する
贈与契約書を作成して「その年に行った贈与である」という事実を明確にしておきましょう。毎年110万円の贈与を行った事実を記録しておくことをお勧めします。銀行振込で贈与を行う場合、振込記録も保管しておくことが重要です。
条件3:相続開始前3年以内の贈与に注意
贈与者(Aさんの両親)が亡くなった場合、その相続開始前3年以内に行われた贈与額は相続財産に加算され、相続税の課税対象になります。
このルールを避けるためには、3年以上前から計画的に贈与を進めることが大切になります。
特例の活用
Aさんご両親のご厚意を最大限に生かすために検討できる特例があります。
■結婚・子育て資金の贈与非課税制度
結婚式や新生活にかかる費用として、一定の条件を満たす場合、最大1000万円まで非課税で贈与が可能です(2027年3月まで)。制度を利用するためには、金融機関を通じて「結婚・子育て資金管理契約」を結ぶ必要があります。
■住宅取得資金の贈与非課税枠
子や孫が住宅を購入するための資金として贈与する場合、最大1000万円(省エネ住宅など)まで非課税枠を利用することが可能です。ただし、住宅の購入時期や契約内容によって適用条件が変わるだけでなく、年度によっても改正される可能性がありますので確認が必要です。
まとめ
贈与税は、所得税や相続税以上に高い税率が適用されますので、確認が必要です。上記で挙げた特例を活用する場合は、税制改正などによって適用対象金額や時期が変わる場合がありますので、贈与者の好意を最大限生かすように金融機関の窓口で確認して臨むようにしてください。
出典
国税庁 No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者