遺言書を書こうと思いますが、自分が亡くなるまで秘密にしておきたいです。自分が亡き後に家族に遺言書を渡す方法はありますか?
また紛失を防ぐために、作成した自筆証書遺言を法務局に保管しておく、自筆証書遺言保管制度の利用を検討してみてもよいかもしれません。しかし、自身が亡くなった時に、遺言の存在を遺族はどのように知るのでしょうか? 本稿では2つの制度を紹介します。
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
指定者通知
指定者通知を利用するか否かは、遺言をする人の希望によります。遺言をする人にもし希望があれば、自筆証書遺言保管制度を利用するときに「指定通知者」の手続きも行います。
指定者通知とは、亡くなったときに、法務局から自筆証書遺言が保管されている旨を遺言者が指定した人に知らせてくれるというものです。誰に知らせるかは3名まで指定できます。
なお、法務局がやってくれるのは「保管されていること」の通知だけで、遺言書の中身までは知らせてくれません。
では、自筆証書遺言が保管されているという通知を受け取ったら、どうすればよいのでしょうか?
関係相続人等(遺言者の推定相続人ならびに遺言書に記載した受遺者等および遺言執行者等)は、法務局に出向き、保管されている自筆証書遺言を閲覧したり、遺言書情報証明書の申請を行ったりすることになります。つまり、通知を受け取った人なら誰でも閲覧や申請ができるわけではない、という点に留意しなくてはなりません。
関係遺言書保管通知
では、自筆証書遺言保管制度を利用した人が、もし指定者通知の手続きを行っていなかった場合には、法定相続人をはじめとした、関係相続人に遺言者の意思が伝わらないことになります。
こうした状況を避けるために、関係遺言書保管通知というものがあります。
これは、自筆証書遺言保管制度を利用している人が亡くなった後、その関係相続人が遺言書の閲覧を行ったときや遺言書情報証明書の交付を受けたときには、他のすべての関係相続人に対して、法務局から自筆証書遺言を保管している旨を通知するものです。この通知には手続きは不要です。
遺言書情報証明書
遺言書情報証明書とは、自筆証書遺言保管制度を利用した人の氏名、生年月日、住所および本籍(または国籍等)に、財産目録を含む遺言書の画像情報を表示したものです。遺言書の内容の証明書となります。
遺言者情報証明書を得ることで、自筆証書遺言の閲覧と同じく、遺言書の内容を確認できるというものです。なお、相続の手続きでは遺言書の原本を添付していましたが、その代わりとして遺言書情報証明書を添付します。
遺言書の閲覧
法務局に保管してある自筆証書遺言を閲覧するというものです。原本を閲覧する場合には、保管してある法務局に出向く必要があります。しかし、モニター越しに、自筆証書遺言を画像で閲覧する場合には、全国にある自筆証書遺言を扱う法務局から閲覧できます。
まとめに代えて
遺族の負担を軽減するため、あるいは自筆証書遺言保管制度を意義あるものにするためにも、指定者通知の手続きを行っておいたほうがいいかもしれません。
相続人が自筆証書遺言保管制度を利用しなかった場合、仮に相続が発生してもご自身の思い(遺言)が伝わらない可能性が十分にあります。家族に遺言書の存在を知らせるためにも、この制度の活用を検討しましょう。
出典
法務省 自筆証書遺言保管制度 10 通知〜通知が届きます!〜
法務省 自筆証書遺言保管制度 05 証明書について
法務省 自筆証書遺言保管制度 04 相続人等の手続
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役