年収500万円で「4000万円」のマンションを購入したい会社員。父に「生前贈与1000万円」を頼んだら、「相続まで待て」と言われた! 相続・贈与どちらでも“損得”はない? 違いを確認
相続だとマイホーム購入の頭金にはできませんが、いずれ住宅ローンに内入れすればよいので、結局の帳尻は合いそうな気はしますが……本当にどちらでも損得はないのでしょうか。解説します。
2級FP技能士
年収500万円に対する住宅ローン4000万円の重さ
4000万円のマンションを35年で購入した場合、月々の返済額は11万円(金利1%、ボーナス払いなしと仮定)を超えます。年収は500万円とのことですが、手取りにすると400万円ほどなので、年間130万円の返済負担は大きいでしょう。
しかし、ここで父が1000万円の頭金を出してくれた場合、住宅ローンは3000万円で済むので、月々の返済額は約8万5000円(同条件)に下がります。
相続まで待つことにメリットはないかも?
結局1000万円受け取れるのであれば、頭金にできなくても内入れで帳尻が合うと思うかもしれません。ただ、その相続は確実なのでしょうか? 人生何があるか分かりません。父が死亡するときには1000万円が残っている状況ではない可能性もゼロではないのです。不確実なものをあてにして4000万円ものローンは怖いと考えたほうがよいのではないでしょうか。
また、住宅ローンの利息は借入残高に対してかかります。最初に4000万円のローンを組んで返済していき、途中で1000万円内入れするケースと、最初から3000万円のローンを組む場合とでは返済利息に差も出ます。
生前贈与なら税金がかからない場合も
父から1000万円受け取る行為は、税金の対象になる点に注意しましょう。生前贈与であれば贈与税、相続であれば相続税です。
ただし、子どもが親や祖父母などから住宅を取得するために資金贈与を受けた場合には、省エネ等住宅で1000万円、それ以外の住宅で500万円まで非課税となる「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」という特例があります。
つまり、そのマンションが省エネ等住宅に該当するのであれば1000万円を無税で受け取れるということです。
また、「相続時精算課税制度」という特例もあり、生前贈与が2500万円まで非課税となります。ただ、相続時精算課税制度は名称のとおり、相続時に課税を精算する制度です。適用を受けた生前贈与については、相続時の相続税計算に含めなければなりません。つまり、課税を贈与時から相続時に延期する制度となっています。
生前贈与時に完結する「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」とは性格が異なる点に注意しましょう。
まとめ
マイホーム購入に際して父から1000万円の資金提供を受けられるのであれば、生前贈与のほうがお得になる可能性が高いでしょう。なぜ父が「相続まで待て」と言っているのか事情を確認したうえで、無理がなければ生前贈与のメリットを説明してみるとよいのではないでしょうか。
出典
国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士