娘の大学費用が足りず奨学金を借りることに。お金を用意できなかった負い目もあり、卒業後は月5万円援助する予定ですが、これは「贈与」になりますか?

配信日: 2025.05.18 更新日: 2025.07.02
この記事は約 4 分で読めます。
娘の大学費用が足りず奨学金を借りることに。お金を用意できなかった負い目もあり、卒業後は月5万円援助する予定ですが、これは「贈与」になりますか?
Aさんのお子さんは高校3年生、来年大学を受験します。Aさんは大学の学費がかなりかかるということは承知のうえで、準備してきたつもりでした。しかし、お子さんが希望する進路が私立大学の理系学部で、予想を上回る学費がかかることから、奨学金を利用することにしました。
 
自分が大学の学費をすべて親から出してもらったこともあり、奨学金の返済は援助するつもりです。そこで本記事では、親が奨学金返済を援助するお金が「贈与」になるのかと、奨学金を申し込む前に考えておきたいポイントを説明します。
蟹山淳子

CFP(R)認定者

宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。

【PR】株式会社アートネイチャー

おすすめポイント

・自毛になじむ自然な仕上がり
・気になる部分だけのピンポイント対応OK
初めてでも安心のカウンセリング体制

「贈与」と贈与税の基本的な考え方

親が子どもの生活費や大学の学費を負担しても、それは扶養義務の範囲として、一般に贈与とはみなされません。しかし、大学を卒業した後に、親が奨学金を返済するためのお金を子どもに渡すと、そのお金は借入金の返済に充てる資金と考えられるため、「贈与」とみなされるでしょう。
 
贈与の場合、受け取った側に贈与税がかかりますが、年間(1月1日~12月31日)に受けた贈与が110万円以下であれば、贈与税納付の義務はなく、税務署に申告する必要もありません。
 
したがって、今回のAさんのケースでは奨学金の返済援助である年60万円(月額5万円)を含めて、娘さんへの贈与が年110万円を超えないよう気を付ければ、贈与税の心配する必要はありません。
 

奨学金の利用は必要最小限に

最も多く利用されている日本学生支援機構の奨学金には、給付型(返済不要)と貸与型(返済が必要)がありますが、給付型は家計基準が厳しいことから、貸与型の奨学金が多く利用されています。貸与型はさらに返還時に利息が付かない第一種奨学金と利息が付く第二種奨学金に分かれますが、利息が付く場合も上限は3%と決まっています。
 
第二種奨学金は、学力基準と家計基準を満たせば、月額12万円まで自分の希望する金額を借りることができます。そのため、足りないと困るからと多めに借りてしまう人も多いようですが、多く借りてしまうと卒業後の返済が大変になります。
 
足りなくて困るようなら、在学中に奨学金の額を増やすこともできるので、毎月の返済額がどのくらいになるのかも調べながら、必要最小限の金額を借りることが重要です。日本学生支援機構のホームページ内に「奨学金貸与・返還シミュレーション」があるので、利用しながら検討するとよいでしょう。
 

【PR】株式会社アートネイチャー

おすすめポイント

・自毛になじむ自然な仕上がり
・気になる部分だけのピンポイント対応OK
初めてでも安心のカウンセリング体制

奨学金の返還(返済)のルール

奨学金を卒業年の3月まで借りた場合、貸与型奨学金の返済は、卒業した年の10月から始まります。第二種奨学金の利率は卒業の3月に、返済期間と毎月の返済額は在学中に借りた奨学金の総額から自動的に決まります。
 
例えば、令和7年3月まで毎月10万円を4年間借りた場合、適用される利率は1.641%(固定方式の場合)、返済期間は20年、毎月の返済額は2万3635円ということです。これから奨学金を利用する場合、利率が上昇する心配もありますが、上記の例で上限利率の3%の場合も毎月の返済額は2万6914円です。
 
また、資金に余裕があれば繰り上げ返還をして、返済期間を短くすることも可能です。
 

まとめ(Aさんへのアドバイス)

Aさんにどのくらいの奨学金を利用するつもりか伺ったところ、年間100万円くらいということでしたので、家計の状況などから判断して、第二種奨学金を月8万円で申し込むことになるでしょう。
 
奨学金を4年間借りると総額は384万円となり、利率が上限の3%だったとして、月2万1531円を20年間返済することになります。月5万円を援助するというAさんのプランは再考の余地がありそうです。
 
Aさんは、奨学金を利用することに負い目を感じているということですが、日本学生支援機構の「令和4年度 学生生活調査」によると、によれば、奨学金を利用している大学生は55.0%ということです。奨学金の利用は、ごく一般的であることをお伝えしました。
 
子どもに家庭の経済状況を話すことをためらうご両親もいらっしゃるようですが、18歳になれば成人なので、もう理解できる年齢ではないでしょうか。
 
親が大学進学に備えて教育資金の準備をしてきたのだけれど、足りそうもないなら、そのことを子どもに伝えましょう。卒業後の返済は援助する気持ちがあることも伝え、親子でよく話し合って進路を決め、奨学金利用のプランを検討しましょう。
 

出典

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
独立行政法人日本学生支援機構 奨学金制度の種類と概要
独立行政法人日本学生支援機構 奨学金貸与・返還シミュレーション
独立行政法人日本学生支援機構 平成19年4月以降に奨学生に採用された方の利率
独立行政法人日本学生支援機構 令和4年度 学生生活調査
 
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問