正直、「相続税」を支払っていない人は多いの? 申告しないことでペナルティはある?
本記事ではその理由や現状、そして本来申告が必要なのに申告しなかった場合のペナルティ(加算税や延滞税など)について解説します。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
相続税を納める人は全体の1割程度に過ぎない
日本では相続が発生しても、実際に相続税を支払っているケースは全体の1割ほどにとどまります。
国税庁の「令和5年分相続税の申告事績の概要」によれば、例えば令和5(2023)年には、全国の被相続人数(死亡者数)約158万人のうち、相続税が課税されたのは9.9%にあたる約15万6000件に過ぎず、相続が発生したおよそ10人に1人程度という割合でした。
この理由として考えられるのは、相続税には基礎控除(一定額まで非課税となる枠)があり、多くの場合、遺産の全額が課税対象から外れるためです。
現行の相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。例えば、相続人が配偶者と子1人なら、3000万円+600万円×2人=4200万円までの遺産には相続税はかかりません。
このように大半の家庭の遺産総額は基礎控除内に収まり、結果として相続税の申告・納税が必要なのはごく少数であると考えられるのです。
申告義務を怠った場合のペナルティ(加算税・延滞税など)
相続税の申告義務がある人が、もし期限内(相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)に申告・納税しなかった場合、税務署から指摘を受ければ厳しい追徴課税のペナルティが最大で3つ、科されます。
1つ目にまず延滞税があります。
延滞税は、納付期限までに税金を納めなかった場合に発生する遅延利息のようなもので、期限後の日数に応じて税金に加算されます。したがって、長期間放置すれば延滞税だけでも相当額になるため注意が必要です。
続いて、無申告加算税というものもあります。
こちらは申告期限までに申告書を提出しなかったことに対するペナルティです。原則として、納めるべき相続税額に対して、金額に応じて15~30%程度の加算税が課されます。つまり、本来の税額に加えて相当額の罰金的な税金を追加で支払うことになります。
悪質な隠ぺい・仮装があった場合には、最も重い重加算税が課されます。
例えば意図的に財産を隠して無申告を続けていたようなケースでは、無申告加算税に代えて課され、本来の税額の40%もの高率な追加課税となります。
そして恐ろしいことに、これらのペナルティは重複して科されることもあります。
期限後に相続税を納付していないことが発覚すると、本来の税額+延滞税+(無申告または重)加算税をまとめて支払う羽目になる可能性があるのです。
相続税は申告しなくてもバレない?
「相続税は申告しなくてもバレないのでは?」と考えるのは非常に危険です。特に遺産規模が大きいケースや申告内容に不審な点がある場合には、重点的に調査される可能性があると考えられるでしょう。
税務署は、被相続人(亡くなった方)の預貯金口座の動きや不動産の名義変更状況などを把握しており、申告がない場合でも、それらの情報から無申告を疑い調査に乗り出すことがあります。
最近では、金融機関からの報告やマイナンバーを通じた資産状況の把握も進んでいるとされ、無申告を見逃してもらえる可能性は低いと考えるべきでしょう。
まとめ
相続税を実際に申告・納税している人は、少なくとも相続した財産の額が3600万円以上であり、国税庁の報告によれば相続が発生した全体のわずか1割程度です。そのため、大多数の人にはもともと申告義務がない可能性も考えられます。
しかし、申告が必要なケースでそれを怠ると、延滞税・無申告加算税といったペナルティを含め、多額の追徴課税を課されるリスクがあります。自分には相続税は関係ないと思い込んでしまうと、後で想定外のペナルティに苦しむことにもなりかねません。
相続が発生したら、一度すべての財産を確認した後、相続税の申告と納税が必要であるかどうかも確認するようにしましょう。
出典
国税庁 令和5年分 相続税の申告事績の概要(1ページ)
執筆者:柘植輝
行政書士