父に「管理が心配だから代わりに預かってほしい」と言われたので、父のお金「800万円」を私名義の口座に入れました。これって贈与になりますか?
課税されないためには、課税条件や管理のポイントを知っておくことが大切です。今回は、代わりに管理しているお金が贈与になるのかや、課税されないためのポイントなどについてご紹介します。
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
「預かったお金」自体は贈与ではない
父親に限らず、親せきや知人、友人などからお互いの了承のうえで預かっているお金は、贈与にはなりません。
民法第549条では「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と定められており、双方が贈与だという認識を持ったうえで承諾しなければ贈与したとみなされないためです。
ただし、自分のために使用したり親のお金である証明ができなかったりすると、「みなし贈与」と判断される可能性があります。みなし贈与とは、お互いに明確な意思表示があったわけではないものの、実質的に贈与されたと判断される行為です。
例えば、成人している子どもが父親から預かった800万円を自分の口座に入れ、使ったとしましょう。この800万円は預かったものである証明がなければ、通常の贈与とは見分けが付きません。結果、みなし贈与として課税される可能性があります。
もし、800万円が贈与として課税されると、基礎控除の110万円を除いた690万円が課税対象です。国税庁によれば、18歳以上の方が父親や母親などの直系尊属から受け取った場合、特例税率が適用され、課税金額が690万円のときの税率は30%、控除額は90万円なので、贈与税は117万円が課されます。
預かったお金に課税されないためのポイント
まず、お金を預かったときは金額や日付、親と子どもそれぞれの署名などを記載した証明書類を作成しましょう。親の介護費用としてお金の管理を任された場合は、お金の使用項目も書類に書いておきます。証明になるので、支払ったときの領収書なども保管が必要です。
また、預かる際の口座は自分が普段使うものと分け、専用の口座を作るとよいでしょう。間違って使い、贈与税が課される事態を避けられます。
お金を預かったまま本人が亡くなると相続財産に
高齢の親からお金を預かり、そのまま親が亡くなった場合、預かっていたお金は相続財産として扱われる可能性があります。あくまでも預かっているお金の持ち主は親なので、子どもが管理していたとしても親の財産として判断される場合があるためです。
相続財産としてみなされると、ほかの親の財産と合計して遺産分割を行う必要があります。また、相続財産の金額によっては相続税の課税対象です。もし、相続財産として加算するのを忘れると、ほかの遺族とトラブルになったり税務署から過少申告として指摘されたりする可能性があります。
お金を預かったまま親が亡くなったときは、相続財産の計算を間違えないように注意しましょう。
預かったお金を管理するだけなら贈与にはならない可能性がある
贈与は、基本的にお互いが贈与と認識したうえで無償で財産を譲り受けたときに成立します。そのため、代わりにお金を預かったり管理したりするだけなら、贈与とは判断されないでしょう。ただし、お金を自分のために使用したり親のお金である証明ができなかったりしたときは贈与と判断され、金額によっては課税される可能性があります。
贈与と判断されないためには、書類を作成したり口座を分けたりするとよいでしょう。お金の使用目的や持ち主を明確にでき、預かったお金である証明となるためです。
なお、親が亡くなった際は代わりに管理していたお金も原則として相続財産となるので、相続財産の計算時に間違えないようにしましょう。
出典
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第三編 債権 第二章 契約 第二節 贈与 第五百四十九条(贈与)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
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