親に出してもらう「500万円の頭金」をそのまま受け取るのはNG? 住宅資金援助で注意したい贈与のポイントとは
そこで、今回は、「500万円の頭金」を親から受け取るケースを例に、住宅購入時に親に資金援助してもらう際の贈与税のポイントを解説します。
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
贈与税の基本:年間110万円を超えると課税対象に
親から金銭の援助を受ける場合に、まず気を付けなければならないのが「贈与税」の存在です。贈与税は、1年間に110万円を超える贈与を受けた場合、その超過分に課税されます。
例えば、住宅購入にあたり、500万円を親から受け取った場合、そのままでは390万円が課税対象になります。
このとき適用される贈与税率は、贈与額や贈与者との関係性、受贈者の年齢などにより異なりますが、成人している方が親から受け取った場合の課税価格390万円であれば税率は15%、控除額は10万円となり、48万5000円もの税金を支払う可能性もあります。
このように、親の協力が思わぬ税負担につながらないよう、しっかりと制度を確認しておく必要があるのです。
非課税にしたいなら「住宅取得等資金の贈与の特例」を利用すべき
贈与税の対象にならない方法として、最も一般的なのが「直系尊属から受けた住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度」です。これは、一定の要件を満たす住宅の購入などに際して、親や祖父母など直系尊属から資金援助を受けた場合に、最大1000万円まで非課税とする特例制度です。
主な適用要件は以下のとおりです。
・受贈者が18歳以上であること
・自ら居住するための住宅を取得すること
・贈与者が直系尊属(父母・祖父母など)であること
・受贈者の、贈与を受けた年の所得税に係る合計所得金額が2000万円以下(住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は1000万円以下)であること
・購入する住宅が床面積や耐震性能など、一定の基準を満たしていること など
こうした要件を満たし、この特例制度を利用することで、500万円の頭金も非課税とすることができ、48万5000円もの節税が可能になるのです。
住宅資金の贈与を受けるにあたり“注意したいポイント”
住宅資金の援助で注意したいのは、「お金の流れ」が不明瞭な場合です。
また、「住宅取得等資金の贈与の特例」の適用にあたっては、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日の間に、非課税特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、必要書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。
万が一手続きを失念したり怠ったりすれば、特例の適用ができなくなり、通常の贈与扱いとされます。仮に通常の贈与とみなされた場合、非課税枠は110万円までとなってしまいます。
まとめ
親からの住宅資金支援は、住宅購入の大きな助けになりますが、思慮なく無計画に受け取ってしまうと、高額な贈与税が発生するリスクもあります。今回の事例のように500万円という金額であっても、普通に受け取れば48万円を超える税金が発生します。
しかし、そういった場合でも、「直系尊属から受けた住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度」を活用すれば、最大1000万円まで非課税で受け取ることが可能です。
ただし、適用要件があるうえ、申告や資金の使途証明など、事務手続きも必要になります。
いずれにせよ、親から贈与を受けるのであれば、税について正しく理解し、親の好意を適切に受け取れるよう準備しておくことをおすすめします。
執筆者 : 柘植輝
行政書士