父の葬儀費用が120万円ほどかかりそうで資金が足りません。公的医療保険から「葬儀費用」の支援があると聞きましたが、いくらもらえますか?
本記事では、それぞれのポイントについて解説します。
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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葬儀費用の目安
株式会社鎌倉新書(東京都中央区)が運営する「いい葬儀」が実施した、「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」(調査期間:2024年3月1~ 4日、調査対象:2022年3月~2024年3月に喪主または喪主に準ずる立場を経験したことのある、日本全国の40歳以上の男女2000件)によると、基本料金(斎場利用料、祭壇、ひつぎ、遺影、骨つぼ、火葬場利用料、搬送費など葬儀一式の費用)は平均75万7000円、飲食費は平均20万7000円、返礼品は平均22万円の合計118万5000円となっています。
葬祭費
加入者が死亡したとき、国民健康保険から葬祭を行った方(喪主または施主)に葬祭費が支給されます。葬祭費の支給額は自治体によって異なります。例えば、札幌市は3万円、堺市は5万円、東京23区は7万円となっています。葬祭費は、申請してから1~2ヶ月後に振り込まれます。
申請には、申請する方の本人確認書類、喪主であったことを確認ができる書類(葬儀店の領収書、請求書、火葬代の領収書、会葬礼状、火葬・埋葬(土葬)証明書等)、金融機関の預貯金通帳または口座番号などの控えなどが必要になります。葬祭を行った日の翌日から起算して、2年を過ぎると時効となりますので早めに申請しましょう。
なお、健康保険の被保険者(本人)が、その資格を喪失してから3ヶ月以内に死亡した場合など、他の健康保険から葬祭費に相当する給付が受けられるときは、国民健康保険(国保)から葬祭費は支給されませんので注意しましょう。
健康保険等に加入していた人が、資格喪失後に傷病手当金や出産手当金を継続して受給している間に亡くなったときや、継続給付を受けなくなってから3ヶ月以内に亡くなった場合も同様に、国民健康保険(国保)から葬祭費は支給されません。
埋葬料
健康保険の被保険者が「業務外」の事由により亡くなった際、亡くなった被保険者によって生計を維持されていて、埋葬を行う方に「埋葬料」として5万円が支給されます。また、埋葬料を受けられる方がいない場合は、実際に埋葬を行った方に、実際に埋葬に要した費用が「埋葬費」(最大5万円)として支給されます。
家族が亡くなった場合も、「家族埋葬料」が支給されますので知っておきましょう。
これらは、申請してから2~3週間後に振り込まれます。葬祭を行った日の翌日から起算して、2年を過ぎると時効となりますので気を付けましょう。
葬祭料(葬祭給付)
業務災害または通勤災害により死亡した方の葬祭を行う際、労災から「葬祭料(葬祭給付)」が支給されます。申請は、被災労働者が亡くなった日の翌日から2年以内に行う必要があります。
支給対象者は、葬祭を執り行う遺族でなくても問題ありません。遺族がおらず、例えば「社葬」として被災労働者の会社が葬祭を執り行った場合には、会社に支給されます。支給額は31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額になります(最低保証額は給付基礎日額の60日分)。
相続財産になる?
埋葬料・葬祭費等は相続財産には含まれないため、相続税の課税対象とはなりません(国民健康法68条、健康保険法62条等)。 埋葬料・葬祭費等は、被相続人(亡くなった人)に給付されるのではなく、葬儀を行った人(申請者)に給付されるからです。 また、本来の相続財産ではないので相続放棄しても受け取ることができます。
葬祭費や埋葬料の申請には期限がありますので、早めに手続きしましょう。
出典
全国健康保険協会(協会けんぽ) ご本人・ご家族が亡くなったとき
厚生労働省 遺族(補償)等給付・葬祭料等(葬祭給付)の請求手続
株式会社鎌倉新書 いい葬儀 第6回お葬式に関する全国調査(2024年)
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。