教育費の援助が非課税になることを知らなくて、孫の大学費用として娘に150万円渡してしまいました。申請前にお金を渡すと税金を取られますか?
本記事で、確認していきましょう。
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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教育費の援助すべてに贈与税がかかるわけではない
教育費の援助すべてに贈与税がかかるわけではなく、一定の条件を満たせば贈与税がかからないという特例があることを確認しましょう。
1. 教育資金の一括贈与非課税制度
祖父母が金融機関を通じて子や孫に教育資金をまとめて渡すと、最大1500万円まで非課税になる制度のことです。ただし、事前に「専用口座開設」「申請」が必要です。
2. 日常的な教育費の非課税措置
税法上、「扶養義務者からの生活費・教育費」は、通常必要な範囲であれば非課税とされています。これは、「直接支払うこと」「必要な都度」援助するという前提が必要です。
今回の相談例は、贈与税の課税対象になる可能性がある
ご相談のケースは、
(1)孫の大学費用(教育目的)である
(2)150万円を娘に一括で渡した
(3)非課税制度の事前申請をしていない
この場合、「教育資金の一括贈与非課税制度」の条件を満たしていないため制度を使えません。したがって通常の贈与とみなされ、年間110万円を超える部分(=40万円)には贈与税が課される可能性があります。
特に、娘名義の口座にまとめて振り込んでいると、「生活資金・教育資金の直接的な支払い」ではなく、「自由に使える贈与」と判断される可能性が高くなります。
対応策はあるか
対応の仕方次第では、贈与税の回避や軽減が可能な場合も残されています。本章で主な3つの対応策について、一つずつ見ていきましょう。
1. 実際の使途と証明書類を確認
娘に渡した150万円が実際に孫の学費・教材費・通学費などに使われたかどうかを、大学からの領収書や請求書、振込記録によって証明できれば、「教育目的の支出」であることを主張しやすくなるでしょう。
2. 娘が代理で支払った場合の証明を残す
娘は、形式的な「支払い代行者」に過ぎず、大学の学費など使い道が明確である場合、贈与ではなく立て替えや支払い補助であると説明できる可能性が残っているといえるでしょう。
3. 贈与税の申告と納付の検討
それでも、最終的に「贈与」であると判断された場合は、贈与税の申告が必要になります(通常、毎年2月1日~3月15日まで)。今回のケースでいえば、150万円-基礎控除110万円=40万円に対する贈与税(10%)=税額は4万円ほどです。
次回以降の教育資金援助に備えて
今後も、同様の支援をする場面が出てくる可能性もあるでしょう。そのときに備えて、検討するべきポイントを確認します。
1.教育資金の一括贈与非課税制度を利用
資金を振り込む前に、事前に金融機関で専用口座を開設し、「非課税申請」を行っておくことをお勧めします。
2.必要な都度、支払先へ直接支払う
授業料を大学へ直接振り込む、通学定期券を購入してあげるなど、直接支払うようにすると非課税になる可能性は上がるでしょう。
気をつけたい点とまとめ
今回のご相談のケースのように、たとえ教育資金の援助であったとしても、事前の準備なしに軽い気持ちで渡してしまうと、贈与税がかかることがあることがあるので、「お金」「税金」の取り扱いは慎重に行うことが求められます。
今回の場合では、事前に非課税制度の申請をしていないという理由から、原則課税対象となります。使い道が明確で、教育費として支出された証明があれば、非課税と認められる可能性も残されているとはいえ、訂正手続きをするとなれば税理士に依頼することも想定され、時間やコストがかかってしまいます。十分注意しましょう。
出典
金融広報中央委員会 知るぽると 10. 贈与税はどんなときにかかるか
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者