独身の叔父が亡くなりました。相続人ではない私に「葬儀費用200万円」の請求が来たのですが、支払う義務はあるのでしょうか?
本記事では、法的な観点ではどうなるのか、葬儀費用の一般的な負担ルール、契約関係の有無による責任の違い、相続人がいない場合の対応方法など、状況別に具体的な判断基準について解説します。
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葬儀費用の負担者は誰か?
一般的に、葬儀費用の負担者は明確に法律で定められているわけではありません。しかし、実務上は以下のようなケースに分かれます。
第一に、葬儀を主宰した人、すなわち喪主が自らの意思と判断で葬儀を執り行った場合、その費用は基本的に喪主の負担とされます。喪主が葬儀会社と契約を交わしていれば、その契約者が費用を支払う義務を負うことになります。
第二に、相続人の合意や地域の習慣によっては、相続財産のなかから葬儀費用を支払うこともあります。葬儀費用を誰がどのように負担するかは法律で決まっていませんが、相続人同士で話し合って「遺産から支払う」などの取り決めをすることができます。
また、地域によっては、昔からの慣習やしきたりに従って費用の分担方法が決まっている場合もあります。相続財産が十分にある場合はそのなかから支払い、足りない場合は相続人が自己負担することになります。
なお、これらの費用は相続財産から優先して支払われるわけではないため、相続人同士での取り決めや分担が必要になる場合もあります。また、葬儀の規模や内容によっては費用が高額になることも多く、誰がどの程度負担するかについてトラブルになるケースもあります。
相続人でない者に支払い義務はある?
あなたが相続人でなく、また葬儀会社との契約も交わしていない場合、原則として葬儀費用を支払う法的義務はありません。請求書が送られてきたとしても、契約関係がなければ支払いを強制されることはないのです。
ただし、例外もあります。
1つ目は、あなたが葬儀の手配をした場合です。喪主を引き受け、葬儀会社と契約を交わした場合、その契約に基づいて支払い義務が生じます。喪主が誰か、誰が契約したかは法的責任に直結する重要な要素です。
2つ目は、相続人や親族間で「費用を分担する」との合意がある場合です。書面での契約がなくても、口頭での合意が明確であり、それに基づいて支払いが求められる場合は、義務が発生する可能性があります。特に家族間では、明文化されていなくても合意が成立したとみなされることもあり、注意が必要です。
つまり、「契約した」「明確に合意した」という状況がなければ、相続人でもないあなたに一方的に請求してくること自体が適切ではない可能性が高いのです。
相続人がいない場合はどうなる?
仮に、被相続人である叔父に相続人がまったく存在しない場合、その財産は「相続財産法人」として取り扱われます。この場合、家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任し、管理人が財産の整理や債務の支払いを行います。
この相続財産管理人は、葬儀費用を含む必要な支出を相続財産から支払うことができます。もし、あなたが立て替えて支払った場合でも、相続財産管理人を通じてその費用を請求し、償還してもらうことが可能です。
ただし、この手続きには時間がかかることが多く、また財産の内容や金額によっては、全額が償還されるとはかぎらないケースもあります。葬儀費用が高額であったり、相続財産が少額であったりする場合には、一部しか戻らないことも想定されます。
また、相続放棄をした人は相続人ではなくなるため、本来は葬儀費用の支払い義務がありません。ただし、実際には葬儀の手配や葬儀施行に関する契約は相続放棄の手続きが完了する前に行われるのが通常です。
この場合、相続放棄の有無にかかわらず、葬儀会社と契約した人(契約者)は、その契約に基づき葬儀費用を支払う義務を負うことになります。したがって、相続放棄をしても契約者としての支払い責任がなくなるわけではない点にご注意ください。
冷静に対応し、専門家に相談を
相続人ではないあなたが、叔父の葬儀費用を負担する法的義務は、契約や明確な合意がないかぎり基本的にはありません。請求が届いたからといって、すぐに応じる必要はありませんし、内容に疑問がある場合は、その場で支払うのではなく、まずは事実関係を確認することが重要です。
また、費用の内訳が不明瞭であったり、相場からかけ離れていたりする場合には、その請求が妥当であるかどうかも含めて確認する必要があります。見積書や契約書がない場合は特に注意が必要です。
相続に関する問題は複雑で、感情的になりやすいものです。不要な支出や誤った対応を避けるためにも、冷静に状況を整理し、正確な知識をもとに判断することが、後悔のない対応につながるでしょう。
不安や疑問点がある場合は、できるだけ早い段階で信頼できる相続に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に相談し、納得できる形で対処することが大切です。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー