保育園のママ友に「教育資金贈与で300万円もらった」と聞きました。贈与税ってかからないのですか?
本記事では、教育資金を一括贈与するときの非課税制度の仕組みや、手続きのポイントについて解説します。
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教育資金の一括贈与の非課税制度とは?
「教育資金の一括贈与の非課税制度」は、祖父母などの直系尊属(父母・祖父母など)から、30歳未満の子や孫に教育資金を一括で贈与した場合、最大1500万円まで贈与税が非課税になるものです。300万円の贈与を受けたママ友のケースも、この制度では非課税の範囲内です。
ただし、現金で手渡しするだけでは非課税にはなりません。贈与を受けた教育資金は、信託銀行や銀行、証券会社など所定の金融機関に専用口座を設けて預け入れ、そこから払い出すことが条件となります。
非課税になるのは教育資金に使った分だけ
この制度では、贈与された金額全体ではなく、実際に教育資金として払い出された分だけが非課税対象となります。500万円を一括で贈与されても、実際に使ったのが300万円であれば、非課税となるのは300万円までです。
一括贈与を受けた教育資金が非課税となる条件
教育資金贈与の非課税制度は、すべての贈与に適用されるわけではありません。受贈者の年齢や贈与者との関係、さらに支出の用途が教育資金に該当するかどうかが定められています。
対象となる人
この制度の対象となるのは、以下に該当する人です。
贈与する人:直系尊属(父母や祖父母、曽祖父母など)
贈与を受ける人:教育資金管理契約を締結する日において30歳未満の子や孫
例えば、22歳大学生の孫に対して、祖父母が贈与する場合には制度の対象となりますが、すでに30歳を超えている場合には適用外です。
対象となる教育資金は?
教育資金とはいえ、その定義は幅広く、学校だけでなく塾や留学なども含まれます。国税庁が示している教育資金の範囲は、図表1の通りです。
図表1
| 学校等に対して直接支払う費用 | 最大1500万円 | ・幼稚園、小・中・高校、大学、大学院などの入学金、授業料、施設費 ・修学旅行費、教材費、給食費、通学定期代 ・海外の正規留学にかかる費用(ビザ取得や授業料、寮費など) |
| 学校以外の教育支出 | 最大500万円 | ・学習塾や予備校の授業料 ・ピアノやバレエなどの習い事 ・英会話教室や検定講座の受講料 |
出典:国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」より筆者作成
対象外となる費目に注意
非課税と認められるのは、あくまでも「教育のために直接かかる費用」です。娯楽的な習い事、学校から必要と認められていない参考書や問題集、将来のための貯蓄などに充てる場合は制度の対象外です。これらの費目に贈与資金を使ってしまうと、その分に対して贈与税が課税される可能性があるため注意してください。
教育資金の支出が本当に非課税として認められるかどうかは、金融機関に提出する領収書や請求書の内容によって判断されます。払い出しがあった都度、金融機関に報告して払出手続きを行う仕組みとなっているため、領収書はきちんと保管しておきましょう。
教育資金の一括贈与の非課税制度を使うときの注意点
教育資金の一括贈与が非課税になるという点だけを聞くと、お得な制度に感じられるかもしれません。しかし、制度の仕組みを正しく理解していないと、「非課税だと思っていたのに、あとから贈与税がかかった」という事態になりかねません。本章で、特に注意したいポイントを確認していきましょう。
金融機関を通さないと非課税にならない
制度を利用するには、金融機関を通じた「専用の管理契約」が必要です。現金や口座振込で直接子や孫に渡しただけでは、たとえ教育資金として使ってもこの制度の対象にはなりません。
30歳を超えると残高に課税されることも
教育資金として贈与を受けた金額は、「30歳までに使い切る」ことが基本ルールです。30歳になった時点で残高がある場合、その未使用分は贈与税の課税対象になる可能性があります。
ただし、大学院や専門職大学などへの進学、または留学中などで「就学継続中」であることが確認できれば、30歳以降も制度の継続が認められるケースもあります。
将来の制度変更にも注意
この教育資金贈与の非課税制度は、期間限定の措置です。2023年度の税制改正で制度の内容が見直され、2026年3月31日までの贈与が対象となりました。今後の政策変更により延長される可能性もありますが、逆に縮小・廃止されるリスクもゼロではありません。そのため、制度の利用を考えている方はなるべく早く手続きを進めましょう。
期間限定の制度であるためタイミングに注意
教育資金の一括贈与が非課税になる制度は、子や孫の将来に向けた支援として有用な仕組みです。しかし、非課税になるためには金融機関を通した手続きや、年齢制限など、いくつかの条件があります。また、制度には期限があるため、使い方やタイミングを誤ると本来のメリットが生かせません。家庭の教育計画に合わせて、賢く活用していきましょう。
出典
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー