専業主婦の妻に、夫が「300万円」の新車を購入! 夫婦間でも“贈与税”はかかる? 生活に必要なら非課税なの?「注意が必要なポイント」も解説
そんなふうに思っていても、「贈与税」について漠然とした不安を感じる人もいるのではないでしょうか。特に、夫が妻のために高額商品を購入するようなケースでは、「これって贈与税の対象になるの?」と疑問に思うかもしれません。
本記事では、夫婦間・家族間の贈与に関する基本的な考え方から、よくある誤解について解説します。
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
夫婦間でも贈与税はかかる? 「生活費」「教育費」の非課税枠とは
贈与税とは、1年間(1月~12月)の間に一定額(110万円)以上の財産を他人から受け取ったとき、受け取った側の人が納めるべき税金です。ここでいう「財産」とは現金や株式などの流動資産だけでなく、車や住居、美術品などの一般的に見て「金銭的な価値がある」と見なされるすべての財産のことをさします。
このように考えると、夫婦間であっても300万円の新車など、高額商品を贈る場合にも贈与税がかかりそうですが、特例として贈与税がかからない場合も複数定義されています。そのうちの一つに、以下の定義があります。
「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」
今回のような自動車の贈与であっても、その自動車が「(日常生活において)通常必要と認められる」と考えられるのであれば、贈与税はかかりません。同様に、夫が専業主婦の妻に常識の範囲内で生活費や子どもの教育費を渡すようなことも、贈与税の対象外となります。
そのほか、親世代から子世代に対する結婚・子育て資金の一括贈与などについても、一定の要件を満たすのであれば非課税になります。家族間においてまとまった財産の贈与を行う予定がある場合は、贈与に関する制度を確認しておきましょう。
高額な新車購入で贈与税を心配する必要はない?
ただし、前述の定義を明らかに超えていると見なされるような贈与については、贈与税の課税対象となることに注意が必要です。
車の贈与を例に取るなら、「すでに生活用の自家用車を家庭で保有しているにもかかわらず、さらに高級車を購入して妻にプレゼントした」というパターンであれば、贈与税の課税対象になりえます。
そのほか、妻が本来は生活費や教育費として夫から受け取っていたお金の一部を「へそくり」にして貯め、株式投資していたというような場合も贈与税の課税対象になります。
特に車の購入をしたときは国土交通省管轄の運輸支局へ購入者の名義が登録されますので、後日に国税庁が登録情報を確認して贈与税が発生すると認識し、納税を求められるという事態がありえます。このような場合は本来の贈与税に加え、延滞税や無申告加算税まで請求されますので、特に注意が必要です。
このような事態を未然に防ぐためには、夫が自動車を新規購入し、通常は妻が使用するとしても、車の所有名義は夫のままにしておくなどの対策が有効でしょう。
夫婦間や家族間など、扶養義務者として財産のやり取りを行う場合は、基本的に贈与税を心配する必要はありません。ただし自動車などの高額商品について、所有名義を購入者から受贈者へ変更することまで考えている場合は、贈与税の発生について注意をしたほうが良いでしょう。
まとめ
夫婦間で高額な贈り物をする場合でも、特に生活に必要なものであれば、贈与税の発生について過度に心配する必要はありません。税法には「生活費」や「教育費」として認められる非課税の範囲があり、また年間110万円という基礎控除も存在します。
大切なのは、これらの税法のルールを正しく理解し、不明な点があれば専門家に相談することです。漠然とした不安を解消し、賢く計画的に財産を形成していきましょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント