親の遺産「3000万円」を兄が「全部お前にあげる」と言い出しました。本当に私1人で相続できるのでしょうか?

配信日: 2025.07.10
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親の遺産「3000万円」を兄が「全部お前にあげる」と言い出しました。本当に私1人で相続できるのでしょうか?
相続は「争続」とも冷やかされるように、場合によっては遺産の奪い合いでもめ事になることもあるようです。一方で、相続人のなかには相続財産を受け取らず、親の介護などに尽くしてくれた他の親族が受け取ることを望む方もいます。
 
親の遺産「3000万円」の相続人が子どもである兄弟(姉妹)だけだった場合、1人だけが遺産を全部受け取ることができるのか、本記事で解説します。
小山英斗

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

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遺産相続の主な3つの方法

相続は、亡くなった人(被相続人)の財産などを、残された家族など(相続人)が引き継ぐことをいいます。相続の方法には、主に図表1の3つがあります。
 
図表1

法定相続 民法で定められた相続人の範囲や順位、相続分に基づいて遺産を分配する方法。
遺言相続 被相続人が生前に作成した遺言書に基づいて遺産を分配する方法。遺言書の内容は法定相続よりも優先されるため、被相続人が自分の意思で財産を配分できる。
遺産分割協議 相続人全員が話し合いによって遺産の分け方を決め、合意内容を文書化する方法。遺言書があっても、相続人全員の合意があれば、遺言書とは異なる分け方での遺産分割が可能。ただし、遺言書で「遺産分割協議の禁止」が指示されている場合、相続人全員が合意したとしても遺産分割協議を行うことは認められない。

筆者作成
 

法定相続による相続分割合

法定相続に基づいた相続を行う場合、被相続人に配偶者がいる場合は、常にその配偶者は法定相続人となり、配偶者以外の人は図表2の順序で、配偶者とともに法定相続人になります。
 
図表2

第1順位 被相続人の子ども
第2順位 被相続人の直系卑属(父母や祖父母など)
第3順位 被相続人の兄弟姉妹

国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」より筆者作成
 
法定相続分は、法定相続人の順位ごとに、図表3のように決まっています。なお、同順位の法定相続人が複数いる場合は、その人数で法定相続分を均等に分けます。
 
図表3

法定相続人 法定相続分
配偶者と子ども 配偶者 1/2、子ども全員で1/2
配偶者と直系尊属 配偶者 2/3、直系尊属全員で 1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者 3/4、兄弟姉妹全員で1/4

国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」より筆者作成
 
また、被相続人に配偶者がいないような場合は、法定相続人の高い順位にいる相続人が、全員で均等に遺産を分け合うことになります。例えば、遺産が3000万円あり、配偶者のいない被相続人に2人の子どもがいれば、子ども1人当たりの法定相続分は1500万円となります。
 

遺産を他の相続人などに譲りたいとき

相続人のなかには相続を受け取らず、親の介護などに尽くしてくれた他の親族などが受け取ることを望むような場合もあります。しかし、法定相続や遺言相続だと、相続人の希望する遺産配分にはならない可能性があります。
 
そこで、遺産を他の相続人などに譲るための方法として「遺産分割協議」、「相続分の譲渡」、「相続放棄」の3つが考えられます。
 

相続人同士で相続分を決める遺産分割協議

遺産分割協議とは、相続人全員が話し合いによって遺産の分け方を決め、合意内容を文書化する方法です。遺言書があっても相続人全員の合意があれば、遺言書とは異なる分け方での遺産分割が可能です。
 
そのため、協議の上で相続人1人に全ての遺産を渡すといったことも可能です。ただし、遺言書で「遺産分割協議の禁止」が指示されている場合は、相続人全員が合意したとしても、遺産分割協議を行うことは認められません。
 
相続人全員の合意が前提のため、後でトラブルが生じにくいというメリットがある一方で、合意に時間がかかるというデメリットがあります。
 
また、話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所で調停による分割を試みたり、それでも解決しない場合は審判によって分割の内容が判断されたり、といった事態になる可能性もあります。
 

相続分の譲渡

相続分の譲渡とは、自分の法定相続分を他人に譲り渡すことです。譲る相手は他の相続人でも、それ以外の第三者でもかまいません。譲渡の条件は、有償・無償のどちらでも可能です。無償譲渡を他の相続人にした場合、譲受人に税金などはかかりません。
 
相続分の譲渡をする場合、相続分の譲渡を行った事実を他の相続人へ通知することを含め、遺産分割前に済ませてしまうことが必要になります。遺産分割が決まった後で、譲渡はできません。
 
また、後日のトラブル回避や相続登記などに必要となるので、実印による相続分譲渡証明書を書面化しておく必要もあります。
 
譲渡をすると遺産相続権を失いますので、遺産分割協議などがある場合でも、参加する必要はありません。
 
なお、遺言書があり、遺産の分割方法が定められている遺産について、相続分の譲渡はできません。また、相続分に負債が含まれている場合、譲渡した人にも負債の支払い義務が残ることにも注意が必要です。
 

相続放棄

相続放棄は、死亡日または相続の開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があり、家庭裁判所で手続きを行います。相続放棄した人は始めから相続人でなかったことになり、その人の相続分は他の相続人に割り振られることになります。相続の譲渡と違って、相続放棄した相続分を特定の人に割り振ることはできません。
 

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相続人が子ども2人だけで、一方に全ての遺産を譲りたい場合は、相続の譲渡が有効

例えば、法定相続人が子ども2人の兄弟(姉妹)だけで、兄(姉)が弟(妹)に遺産3000万円全部を受け取ってほしいような場合、他に相続人がいないことや手続きの手間などを考慮すると、兄(姉)から弟(妹)へ法定相続分の1500万円を譲渡する方法がもっとも妥当でしょう。
 
ただし、遺言書があり、遺産の分割方法が定められている遺産は、相続分の譲渡を行えません。この場合は遺産分割協議をするか、遺産を相続した後で財産ごとに譲渡を検討する必要があります。
 

遺産3000万円にかかる相続税

相続には相続税がかかることにも考慮が必要です。遺産全部を特定の相続人が受け取ることは、遺産分割協議などといった方法で可能ですが、遺産を多く受け取ればその分相続税の負担も増します。
 
また、相続税には基礎控除があり、相続財産の総額(課税価格の合計)から控除することができます。基礎控除額は、以下の式で計算できます。
 
基礎控除額 = 3000万円+600万円 × 法定相続人の数
 
例えば、遺産3000万円に対して法定相続人が子ども2人だけの場合、基礎控除額は3000万円+600万円×2 = 4200万円となり、相続税はかかりません。
 
なお相続税法上は、相続放棄をした人も法定相続人の数に含めます。
 

まとめ

親の遺産を兄(姉)が弟(妹)に全部あげることは、「相続分の譲渡」や「遺産分割協議」といった方法で可能です。ただし遺言書がある場合、その内容によっては相続分の譲渡や遺産分割協議をえない場合があることに注意が必要です。
 
相続分の譲渡などを検討する場合は、弁護士や行政書士、税理士など必要に応じて専門家に相談しましょう。また自治体でも相続に関する相談窓口を設けている場合もありますので、住んでいる地域の自治体にも相談してみるのもよいでしょう。
 

出典

国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
国税庁 No.4155 相続税の税率
 
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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