「中古マンションを親が買ってくれた」はNG? 税務署に目をつけられる“家族間お金トラブル”の典型例とは
本記事では、家族間資金援助による“贈与”判断のポイントや非課税の特例、トラブル回避の具体策まで、分かりやすく解説します。将来の相続や税務リスクを未然に防ぎたい方はぜひ参考にしてください。
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「親が中古マンションを買ってくれた」は贈与? 税務署はどう見るの?
親が子どものために中古マンションを購入し、子どもの名義で登記した場合や、購入資金を渡してそのまま使わせた場合、税法上の「贈与」に該当するでしょう。
民法第549条には、「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と定められており、たとえ家族間であっても、多額の資金移動があると、贈与税の課税対象となる可能性があります。
例えば、年収300万円ほどの20代の人が、5000万円ものマンションを現金で一括購入したとすれば、税務署がその資金源を調査する可能性は高まります。見かけ上は親からの援助であっても、正式な手続きをしていなければ、後で問題になることもあるのです。
贈与税が発生するケースと、非課税の特例とは?
贈与税は、年間110万円を超える贈与に対して発生します。これは親からの住宅購入資金の援助にも当てはまります。しかし、一定の条件を満たせば、非課税となる特例制度があります。
国税庁によると、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例」では、直系尊属、つまり親や祖父母などから住宅取得等資金の贈与を受ける場合、500万円まで非課税となります。さらに住宅が省エネ等基準などの認定を受けた場合には、非課税枠は1000万円まで拡大されます。この特例は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までが適用期間です。
さらに、「相続時精算課税」という制度もあります。これは、原則として60歳以上の父母または祖父母などが、18歳以上の子や孫などに財産を贈与する場合、毎年110万円の基礎控除に加え、最大2500万円までの特別控除も利用できる制度です。ただし、この制度を利用した場合、「110万円×贈与年数」を超えた贈与分が将来の相続財産に合算され、相続税の対象になります。
また、注意したいのが親からの援助を「借金」として処理するケースです。たとえ親子間であっても、借用書を作成していなかったり、返済期限や利子について明記されていなかったりすると、税務署はそれを「贈与」と判断する可能性があります。「借金」というからには、「金銭消費貸借契約書」を交わし、定期的に返済を行い、その記録を残しておく必要があるでしょう。
「お尋ね」文書・税務調査の典型パターンとその対応
マンションの購入後、税務署から「お尋ね」が届くことがあります。これは、納税者が不動産を取得した際に、その資金源を確認するために送付される文書です。「お尋ね」には、購入資金の内訳や収入の状況、贈与の有無などを記載する欄があり、正確に答える必要があります。
また、相続が発生した際に、過去の贈与が調査対象となることもあります。例えば、生前に親が子どもに住宅資金を提供していたにもかかわらず、その申告をしていなかった場合、相続税の申告時に贈与分を含めた再計算が求められることがあります。
このとき、申告していなかった事実が発覚すると、延滞税や無申告加算税、場合によっては重加算税が課されることもあるため、注意が必要です。
こうしたトラブルを防ぐためには、贈与の事実があった場合には必ず贈与税の申告を行うこと、そして「借金」として処理する場合でも、契約書や振込記録などの客観的な証拠を残すことが重要です。
契約書の作成はもちろん、金銭の授受は現金ではなく銀行振込などにして履歴を残すことが、税務署への合理的な説明に役立ちます。
まとめ
親が子どものために中古マンションなどを買ってくれるのは、経済的にも精神的にも大きな支援となります。しかし、そこに税務上のリスクが潜んでいることを理解しておくことが大切です。贈与税が発生する場合にはきちんと申告を行い、非課税の特例が利用できるならば制度を活用しましょう。
また、将来的な相続時のトラブルを避けるためにも、資金の流れを明確にし、書類を整えておくことが必要です。契約書や振込明細など、客観的な証拠を残すことで、税務署からの調査にも対応しやすくなります。
制度を正しく理解し、計画的に対策をとることで、「親が買ってくれた中古マンション」がトラブルの種になることなく、安心して暮らせる資産として残せるでしょう。
出典
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第三編 債権 第二章 契約 第二節 贈与 第五百四十九条(贈与)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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