90歳の母の葬儀を行いました。母は人脈が広く、香典の総額が100万円ほどだったのですが、喪主を務めた私は税金を取られますか?
ところが、母は人脈が広く、葬儀の連絡を聞いた人から連絡が広がり、多くの方に弔問にお越しいただいたそうです。そのため、いただいた香典の総額100万円ほどになり、これだけ高額になると、「喪主の私は税金を取られるのか?」と心配になったとのことです。
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
香典に贈与税はかからない
1年間にもらった金額が110万円を超えなければ、贈与税はかかりません。しかし、なかには贈与税の対象にならないため、110万円を超えても贈与税がかからないものがあります。香典もその一つです。
国税庁の相続税法基本通達21の3-9(社交上必要と認められる香典等の非課税の取扱い)には、「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする」とあります(出典:国税庁「法令解釈通達」)。
“社会通念上相当と認められるもの”であれば、香典は贈与税の対象にはならないので、受け取った金額が200万円になったとしても、贈与税はかかりません。相続税についても、香典は亡くなった方の財産ではないので、相続財産にはあたりません。
会社からの花輪代、弔慰金はどうなの?
では、会社から弔慰金や花輪代を受け取る場合はどうなのでしょう。この場合も、所得税基本通達9-23《葬祭料、香典等》により課税されないとあります。
所得税基本通達9-23《葬祭料、香典等》には、以下のように書かれています。
「葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、令第30条の規定により課税しないものとする」(出典:国税庁「法令解釈通達」)
相続人が受け取るものが、弔慰金等が退職手当等に該当するかどうか明確でない場合は、以下を弔慰金等とします。
・業務上死亡の場合には、普通給与額の3年分相当額
・業務上の死亡でない場合には、普通給与額の半年分相当額
これを超える部分を退職手当金等に該当するものとされ、相続税の課税対象になります。
たとえ弔慰金等とされたとしても、社会通念上相当と認められる額を超える部分は、本来、退職手当金等に該当するものとされます。
日常生活で贈与税の対象とならないもの
日常生活を送るうえで、慣習としてお金やもののやり取りが行われることがあります。香典のほかに、年末年始の贈答や祝物、見舞金なども同様です。
社会通念上相当とされる金額は一律ではなく、受贈者間の関係性、社会的地位等、個々によって社会通念上相当とされる金額は異なりますが、社会通念上相当として認められる金額であれば、贈与税の対象になりません。
贈与されたお金を、通常の日常生活に必要な生活費(治療費、養育費、子育てに関する費用)、教育費(学費のほか、教材費・文具費など)を、必要な「都度」、「直接」に充てる場合は、贈与税がかかりません。ただし、生活費や教育費の名目で贈与を受けたとしても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てたりすると、贈与税がかかります。
まとめ
受け取った総額が110万円を超えていても、個々の香典が「社会通念上相当と認められる金額」であれば、贈与税はかかりません。
しかし、大切なのは受け取ったお金の性質と使い道です。不安なときは税務署や専門家に相談して、正しく理解したうえで安心して対応しましょう。
出典
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 贈与税の対象とならない弔慰金等
国税庁 法令解釈通達
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者