親の遺言書に「遺産はすべて長男に」との記載が…ほかの兄弟は一切受け取れないのでしょうか?

配信日: 2025.07.24
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親の遺言書に「遺産はすべて長男に」との記載が…ほかの兄弟は一切受け取れないのでしょうか?
親が亡くなり、遺言書が残されていた場合、その内容について納得のいかない思いをする人もいるでしょう。
 
そもそも、遺言書に書かれている内容には法的な効力があるのか、その通りにしなければどうなるのかなど、疑問に思う人もいるかもしれません。
 
本記事では、「遺産は長男に」と記載されている遺言書があるとほかの兄弟は遺産を受け取れないのか?ということについて、遺言書の効力や種類とともにまとめています。
FINANCIAL FIELD編集部

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高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

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遺言書の内容が最優先されるのか?

遺言書が残されていない場合は、遺産分割協議によって法定相続人が遺産の分配方法を決めていきます。たとえ遺言書があったとしても、相続人全員の合意があれば、財産の分け方を自由に決めることが可能です。
 
遺産分割協議で相続人全員の合意が得られない場合は、家庭裁判所の調停および審判によって法定相続分に従う形で相続方法が決まることになるでしょう。
 
しかし、相続人全員が遺言書に記載されている方法とは異なる方法での遺産分割をおこなうことに合意している場合を除き、遺言書の内容が法定相続分より優先されます。
 
そのため、遺言書に「遺産はすべて長男に」という内容が書かれている場合は、基本的にはその遺志に従うことになるでしょう。ただし、相続には「遺留分」というものがあるため、ほかの兄弟は侵害学請求権により、遺留分を受け取る権利を回復することができます。
 
ただし、遺留分を侵害する贈与や遺贈があった場合、遺留分権利者がその事実を認知した時点から1年間権利を行使しなければ、時効により消滅してしまいます。また、相続開始から10年たった場合も、同様の扱いになることは覚えておきましょう。
 

「遺留分」とは?

遺留分とは一定の相続人の権利や生活を保障することを目的としたもので、最低限受け取ることができる遺留分侵害額請求権のことをいいます。
 
民法第千四十二条によると、遺留分を受け取ることが認められているのは「兄弟姉妹以外の相続人」ということなので、今回の事例では遺言書に記載されている長男以外の兄弟も遺留分を受け取れることになります。
 
受け取れる遺留分は、相続人が直系尊属のみの場合は相続財産全体の3分の1、それ以外の場合は2分の1です。例えば、相続人が配偶者と子どもの場合の法定相続分は2分の1ずつになるため「2分の1×2分の1=4分の1」が遺留分となります。
 
さらに、子どもが複数人いる場合は等分します。今回の事例では子どもが複数人いると考えられますが、例えば配偶者のほかに子どもが2人いる場合の遺留分は「8分の1」、3人いる場合は「16分の1」です。
 

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遺言書の種類と効力

遺言書は自分の財産に関する意思を確実に伝えるための手段とされています。民法第九百六十条に「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」と記載されていることから、正しく作成されていれば法的効力を持つことが分かります。
 
遺言書がない場合は相続人同士の話し合いによって遺産をどのように分けるかが決まりますが、遺言書がある場合は基本的にその内容に従うことになるでしょう。
 
遺言書には、遺言者本人の手書きで作成されている「自筆証書遺言」と、遺言者の希望を聞いて公証人が作成する「公正証書遺言」、内容を秘密にしながら存在だけを公証人に証明してもらう「秘密証書遺言」の3種類があります。
 
自筆証書遺言は遺言者がその全文と日付・氏名を手書きして押印するもので、公正証書遺言は2人以上の証人の立ち合いのもと、公正役場で作成・保管されるものです。
 
秘密証書遺言は自筆証書遺言で起こりがちな偽造や変造の問題への対策には優れていますが、2名以上の証人の立ち合いが必要だったり、家庭裁判所の検認を受けたりしなければならない点には注意しましょう。
 

遺言書に一人の子どもに遺産を渡すよう記載されていても、ほかの兄弟も遺留分を受け取れる可能性がある

遺言書がある場合は基本的に、法定相続分よりも遺言書の内容が優先されます。
 
しかし、今回の事例のように、親の遺言書に遺産を一人の子どもに渡すよう記載されている場合であっても、民法ではほかの兄弟などが受け取れる最低限の遺産額である「遺留分」が認められています。
 
いくら請求できるかは、遺言者に配偶者がいるか、子どもは何人いるかによって変わってくるため、確認してみるとよいでしょう。
 

出典

政府広報オンライン 相続・遺言 知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方
e-GOV法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第七章 遺言 第一節 総則 (遺言の方式)第九百六十条・第九章 遺留分 (遺留分の帰属及びその割合)第千四十二条
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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