遺留分は必ず請求できるのですか? 父の「遺産1000万円」を全て受け取りたいです。

配信日: 2025.07.29
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遺留分は必ず請求できるのですか? 父の「遺産1000万円」を全て受け取りたいです。
遺言書によって、遺産分割の割合が指定されていると、他の相続人から「遺留分」を請求されることがあるようです。遺留分とは何なのでしょうか。必ず請求できるのでしょうか。
 
この記事では、「父親の遺産を1000万円受け取った方が、他の相続人から遺留分を主張された」という事例を基に、解説していきます。
柘植輝

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

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遺留分とは?

そもそも遺留分とは、法定相続人に対して保証されている、最低限の遺産の取り分のことです。
 
簡単に言うと「遺言書で遺産の配分が決まっていても、一定範囲にある親族は“一定の割合の遺産をもらう権利”を主張できる」という制度です。とはいえ、遺留分は自動的に確保されるわけではありません。
 
そして、遺留分を請求できる範囲にある人は、以下に該当する方です。


・配偶者(亡くなった人の夫・妻)
・子どもや孫など(直系卑属)
・父母や祖父母など(直系尊属)※子どもがいない場合のみ

一方で、亡くなった方の兄弟姉妹には遺留分がありません。
 
つまり、今回の事例においては、亡くなった父に配偶者や他の子ども(自身の兄弟姉妹)がいる場合は、遺留分を請求される可能性がありますが、亡くなった父の兄弟姉妹(叔父や叔母)にはその権利がないのです。
 
そのため、自身の兄弟姉妹の相続分が遺留分以下であれば、その額に満たない部分が遺留分として請求された場合、支払いをしなければならないことになります。なお、遺留分の割合は法律で決まっています。具体的な遺留分の額の計算は、相続人の組み合わせによって変わります。
 
表1

相続人の組み合わせ 遺留分の割合 遺留分の合計額
(1000万円の遺産の場合)
配偶者のみ 1/2 500万円
子ども1人 1/2 500万円
子ども2人(兄弟姉妹) 1/2(1/4ずつ) 500万円(250万円ずつ)
父母のみ(子どもなし) 1/3 約333万円(1人あたり約167万円)
兄弟姉妹のみ なし 請求できない

※筆者作成
 

遺産1000万円を全額受け取ることは可能か?

基本的に遺産全額を受け取ることは、仮に自身以外に相続人がおらず、かつ、他の人に遺産を渡す旨の遺言書もなければ可能です。遺留分も、請求してきている方が亡くなった方の兄弟姉妹(このケースの場合は自身の叔父・叔母)などのみであれば、支払う必要はありません。
 
ただし、遺留分の規定は、遺言書や亡くなった方と相続人本人の意思に優先します。そのため、「遺言書に自分全てが1000万円の財産を受け取る」という記載があったとしても、自身の兄弟姉妹など遺留分を有する相続人から請求をされれば、遺留分を支払わなければなりません。
 
なお、遺留分には時効があります。具体的に言うと、遺留分侵害額請求権を行使する方が、相続開始および自身の遺留分が侵害されたことを知ったときから1年間、または相続開始から10年です。
 
その期間を過ぎると遺留分侵害額請求権は行使できないため、仮に遺留分を請求されても遺産全額を受け取ることが可能です。
 

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遺留分を支払わずに遺産を全て受け取る方法

遺留分は法律で定められた権利であるため、基本的に対象となる相続人に行使させないのは難しいのが現実です。
 
遺留分に抵触しないようにする方法としては、相続財産を減らすために生前から贈与を受けておく、遺産を生命保険に替えておき、受取人を自分にしてもらう、などが挙げられます。
 
とはいえ生前贈与も、過去7年は相続財産としてカウントされるなど、トラブルの原因ともなりかねません。
 
交渉して遺留分侵害額請求権を行使させないことも可能かもしれませんが、親族関係を悪化させる可能性もあります。そのため、遺留分侵害額請求権は行使されるものと考えておくべきでしょう。
 

まとめ

遺留分は必ず請求されるわけではないですが、その範囲は広くなっています。配偶者や子ども、父母など自分以外に相続人がいれば、たいていの場合、遺留分を持つ相続人が他にいると考えるべきです。
 
また、遺留分侵害額請求権は行使されると遺言書に優先されるため、基本的に支払いを拒否することは不可能と考えてよいでしょう。
 
遺留分を自身が侵害しているあるいはその可能性があれば、下手に対策や交渉をして親族関係を悪化させるよりは、素直に支払い、法的にも親族関係的にも穏やかに相続を進める方を選ぶことをおすすめします。
 
執筆者 : 柘植輝
行政書士

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