80代の父が「現金が一番安全」と言って”500万円以上”をタンス預金しています。相続する場合、相続税はかかりますか?

配信日: 2025.07.30
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80代の父が「現金が一番安全」と言って”500万円以上”をタンス預金しています。相続する場合、相続税はかかりますか?
現金が金融機関の預貯金の口座や証券口座にあるのであれば、すぐに把握できますが、自宅にそのまま置いてある場合、本人以外は把握できません。
 
そういった理由から「この手段が安全」と思いがちですが、そう簡単にはいかないようです。本記事で、相続税について確認しましょう。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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タンス預金は相続税の課税対象

相続税の対象となるのは、被相続人が亡くなった時点で所有していたすべての財産です。これには、次のようなものが含まれます。


・銀行預金
・不動産
・株式、投資信託
・現金(タンス預金も含む)
・車、貴金属、美術品

など

したがって、タンスにしまってある現金500万円以上も、相続税の計算対象です。
 

税務署はどうやってタンス預金を把握するのか?

そこでよくある質問ですが、税務署は次のような方法でタンス預金の存在を把握できます。
 

1. 亡くなった方の生活歴・収入・支出との整合性や家の中の現金や金庫が見つかった場合

年金・給与・不動産収入などから、「手元にこれだけ現金があっても不自然ではないか」がチェックされます。例えば、故人の生前の収入(年金と不動産収入など)に対して、「申告された相続財産が少なすぎる」と税務署から判断される場合があります。
 
特に、銀行口座から不自然に多額の現金が引き出されていて、「タンス預金として保有していたのではないか」と推定されると、実際に現金が見つかった場合はもとより、見つからなかった場合でも「推定課税」が行われます。
 
その結果、税務調査から申告漏れによる追徴課税が課されたという事例が報告されています。
 
相続人側が「ない」と主張した場合でも、合理的な反証がなければ覆すのは難しく、異議申立て・審査請求といった不服申立ても可能ですが、客観的証拠が必要になり非常に煩雑なプロセスが必要とされます。
 

2. 他の相続人からの申告・通報

相続人間のトラブルで“申告漏れ”が発覚するケースも見られます。
 
例えば、相続人同士の仲が悪く、長男が父親の「現金1000万円」を申告せずに独占した場合、次男が不審に感じて税務署に相談したことをきっかけに、税務調査が行われることがあります。その結果、未申告分の現金が発覚し、無申告加算税・延滞税を含めて課税される場合などです。
 

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相続税がかかるかどうかの基準

相続税が実際にかかるかどうかは、「基礎控除額」以下かどうかで決まります。相続税の基礎控除額は、以下の計算式で算出します。


【相続税の基礎控除額】

3000万円+600万円×法定相続人の数

例えば、相続人が配偶者と子2人(計3人)の場合、3000万円+ 600万円 × 3 人= 4800万円までは非課税です。つまり、タンス預金が500万円であっても、相続財産全体が基礎控除内であれば相続税はかかりません。ただし、課税対象として申告上は計上する必要があります。
 

注意点:申告漏れ・加算税のリスク

タンス預金を故意に申告しない場合、税務調査で発覚すると加算税や延滞税が課されます。


過少申告加算税:10~15%
無申告加算税:15~20%
延滞税:年2.4%程度(変動あり)

したがって「バレないだろう」と思って申告しなかった結果、税額が1.2~1.4倍に膨らむこともあります。
 

まとめ

生前のうちに、「現金の存在と管理」を明確にしておきましょう。単に相続税対策というだけでなく、 相続人同士のトラブル防止にもつながります。
 
タンス預金も立派な「財産」です。金庫・貸金庫の利用も選択肢に入れて、安全性と透明性を確保しておきましょう。ご家族でトラブルなく資産を引き継ぐためにも、早めの整理と対話が最も重要な節約対策です。
 

出典

国税庁 No.4105 相続税がかかる財産
国税庁 No.4152 相続税の計算
国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき
国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
国税庁 延滞税の割合
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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