急逝した父の「葬儀費用」が「10万円」足りません。「遺産分割」の前でも故人の口座からお金を引き出せる制度があると聞いたのですが「利用条件」はあるのでしょうか?

配信日: 2025.07.31
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急逝した父の「葬儀費用」が「10万円」足りません。「遺産分割」の前でも故人の口座からお金を引き出せる制度があると聞いたのですが「利用条件」はあるのでしょうか?
相続が発生すると、亡くなった方の銀行口座は凍結します。そのため、遺産分割協議が終わるまでは現金の引き出しができないことが原則です。しかし、葬儀や医療費の支払いなどで、相続発生時にはまとまったお金が必要になるケースも少なくありません。
 
そこで今回は、預貯金の払戻し制度について、手続き方法や利用時の注意点を詳しく解説していきます。
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遺産分割前でも引き出せる「預貯金の払戻し制度」について

預貯金の払戻し制度とは、亡くなった方の銀行口座から預貯金の一部を仮払いとして引き出しできる制度です。一般的に亡くなった方の預貯金は相続財産の対象となり、相続人全員で遺産分割協議を行わないと引き出しができません。
 
しかし今回のケースのように、葬儀費用などまとまったお金が突然必要になる場合もあるでしょう。そこで活用できる制度が、一定金額を限度に出金可能とする「預貯金の払戻し制度」です。
 
この制度には家庭裁判所の判断が必要なものと、家庭裁判所の判断を待たずに払戻しできるものがあります。どちらの制度を利用するかにより、引き出しできる上限額は異なります。家庭裁判所の審判を受ける場合は、裁判所が必要と認めた金額まで引き出し可能です。
 
家庭裁判所の審判を不要とするケースでは、次の金額のどちらか少ない方を上限として引き出すことができます。


・相続開始時の預貯金残高×1/3×払戻しを行う法定相続人分
・150万円

この制度を利用して払戻しを受けた場合、払戻しを受けた相続人が前もって相続したものとみなされるため、遺産分割の際に考慮する必要があります。
 

必要書類と手続き方法

預貯金の払戻し制度を利用する場合は、次のような書類を金融機関へ提出する必要があります。


・亡くなった方の除籍謄本、出生から死亡まで連続した戸籍謄本または全部事項証明書
・相続人全員分の戸籍謄本または全部事項証明書
・手続きする方の印鑑証明書
・手続きする方の身分証明書

必要書類は各金融機関により異なる場合があるため、手続き前に該当の金融機関へ確認しておくと安心です。なお、こちらでは、家庭裁判所を通さずに利用できる制度について解説しています。
 

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利用時の注意点

遺産分割協議前の預貯金払戻し制度は、亡くなった後にまとまった資金が必要な際、相続人の経済的負担を軽減してくれる制度です。しかし利用にあたっては、相続放棄ができなくなるおそれがある点には注意しましょう。
 
相続放棄とは、プラスの財産よりも借金などのマイナスの財産が多い場合に、相続権を一切放棄して、マイナスの財産を相続しないようにする手続きです。しかし、預貯金の払戻し制度を利用すると、相続財産を処分してすべての財産を相続する単純承認したとみなされる可能性があります。
 
ただし、実際には常識の範囲内の葬儀であれば財産の処分には当たらず、単純承認に該当しないとした事例もあるようです。預貯金払戻し制度を検討する場合は、必ず相続財産全体の状況を把握し、判断に迷う場合は相続に詳しい専門家である弁護士や司法書士に相談するようにしましょう。
 

預貯金の払戻し制度には利用条件がある

預貯金の払戻し制度は、相続発生時に急な出費で悩む遺族にとって大きな助けとなる制度です。利用にあたっては考慮すべき点がいくつかありますが、あらかじめ制度を正しく理解しておくことが大切です。
 
相続はご家庭により状況はさまざまで、専門的な知識や判断が必要になるケースもあります。
 
いざという時にスムーズに手続きを進められるように、日頃から情報収集をするとともに、困った際には相続に詳しい専門家に相談するとよいでしょう。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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