実家の名義を「親から子ども」に変えると税金がかかりますか?「贈与」と「相続」ならどちらがより「節税」できるのでしょうか?
今回は、実家の名義変更で課される可能性のある税金や、名義変更のタイミングによっていくらくらい税額が変わる場合があるのかなどについてご紹介します。
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目次
実家の名義を子どもに変えると発生する可能性のある税金
実家の名義を変えることは、子どもに「実家」という財産を渡すことになります。そのため、もし親が生きている間に名義変更をすると、贈与税が課されるでしょう。なお、このように生きている間に財産を渡すことを生前贈与といいます。
一方、親が亡くなったあとに相続財産として実家を受け取った場合は、相続税が課される可能性があります。
生前贈与と相続では、基礎控除の金額や税率が変わります。基礎控除で比較すると贈与税は110万円、相続税は「3000万円+600万円×法定相続人数」です。どちらが得かは一度簡単に計算し、確認してみましょう。
ただし、基本的に実家をもらうのであれば、相続の方が節税できる可能性が高いです。実家の受け渡しはまとまった金額の財産をもらうことになるので、基礎控除額がより大きい相続税の方が課税される金額が少なくなりやすいためです。
また実家に一緒に住んでいた場合は小規模宅地等の特例も適用される場合があります。特例では、同居していた親族が亡くなった人の住居用の土地を相続した際、相続財産に加算する土地の金額の80%の減額が可能です。最大で330平方メートル分の土地まで適用できます。
特例が適用されれば、相続税はさらに軽減できるでしょう。
3000万円の家だと生前贈与と相続で税額はいくら変わる?
今回は、以下の条件で合計3000万円の実家と土地を子どもが贈与されたときと相続したときの税額の差を比較しましょう。
・贈与も相続も財産は同居していた評価額1500万円の実家と330平方メートルで1500万円の土地のみ
・子どもは成人に達している
・法定相続人は子ども一人のみ
まず、合計3000万円の実家と土地を贈与された場合、基礎控除を差し引いた2890万円に対して課税されます。この場合、税率は45%、控除額は265万円になるため、贈与税額は1035万5000円です。
一方、条件の通りだと相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×一人」となり、3600万円になります。また、土地に対して小規模宅地等の特例が適用されるため、土地の相続財産への課税金額は300万円です。相続財産額合計で1800万円と基礎控除内のため、税金はかかりません。
つまり、今回の条件では同じ金額の贈与と相続では、相続の方が税金負担はない結果です。実際、贈与や相続した金額に対する税率は、贈与税の方が高く設定されています。
できるだけ節税をしたいのであれば、相続で渡した方がよいでしょう。
なお、相続が始まる前に名義変更したいものの、贈与税を避けたい場合は相続時精算課税を利用する方法もあります。相続時精算課税制度は、60歳以上の両親や祖父母から成人している子どもや孫への贈与の際に選択できる制度です。
亡くなるまでの贈与に対する毎年110万円の基礎控除に2500万円の特別控除が加わり、1年で控除しきれなかった残額は翌年以降に持ち越されます。2500万円を超えた分に対して一律で20%の贈与税が課されます。
本制度で受け取った贈与は、制度の適用者だった被相続人が亡くなった際に相続財産として加算されますが、加算後も相続税の基礎控除額内であれば相続税はかかりません。また、制度で支払った贈与税は相続税額から控除でき、控除しきれない分は還付を受けられます。
ただし、相続開始日によって、加算対象期間が異なる点に注意しておきましょう。
実家を相続するときの注意点
実家などの金額が大きいものに関しては、一般的に贈与よりも相続の方が税金は節約できます。しかし、実家を相続するときにほかの相続人もいると、実家を受け取る人とそれ以外の人で相続内容について話し合いがまとまらず、トラブルになる可能性もゼロではありません。
また、実家以外を相続しなかった場合でも実家が相続税の基礎控除額を超えていた場合、支払う税額は自分の貯金から支払う必要があります。
さらに、実家を相続したあともその家に住むなら問題ありませんが、別に家を持っている場合、適切な管理も重要です。管理を放置し続けると危険な空き家として扱われ、税金負担が重くなる場合もあるので注意しましょう。
実家は相続した方が税金負担は軽くなる可能性がある
実家を親名義から子ども名義に変更する場合、親から子どもへ財産を渡すことになります。実家は現金とは異なり、分割して渡すことはできないため、評価額がそのまま贈与額、相続財産額になるでしょう。
もし贈与として受け取ると、相続税よりも税率が高く設定されているため、税金負担も大きくなります。今回のケースでは、3000万円の実家と土地を受け取ることで1035万5000円の税金が発生する結果です。
一方、相続財産としてなら税金が課されないため、1000万円以上の節約にもつながるでしょう。実家の名義変更を親から打診されたときは、こうした例も参考に税金負担が少ない方法で受け取るとよいでしょう。
出典
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版) 財産を相続したとき
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)<特例贈与財産用>(特例税率)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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