母が「家を娘名義にしておけば相続税がかからない」と言っていますが、それって本当なのでしょうか?

配信日: 2025.08.04
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母が「家を娘名義にしておけば相続税がかからない」と言っていますが、それって本当なのでしょうか?
「家を娘(子ども)名義にしておけば相続税がかからない」とお考えの方はいらっしゃるでしょうか。そのような方は、「相続税」対策をお考えなのではないかと思われます。確かに相続税対策を考えることは大事なのですが、注意しなければいけないこともあります。
 
そこで本記事では、「家を娘名義にしておけば相続税はかからないのか?」「家を娘名義にしておくことは相続税対策として得策なのか?」について解説します。相続対策について言及していますので、ぜひ最後までお読みください。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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家を娘名義にしておけば相続税はかからないのか?

「母が『家を娘名義にしておけば相続税がかからない』と言っています」ということから、お母さまとしては、「相続税は亡くなった方(被相続人)の財産(遺産)に対して課税されるものであって、被相続人名義でなければ(家を娘名義にしておけば)相続税の課税対象とはならない」とご認識されているように思われます。
 
ここで、相続税が課される財産について確認します。相続税が課される財産は、以下のとおりです。

(1)被相続人が亡くなった時点において所有していた財産
(2)みなし相続財産
(3)被相続人から取得した相続時精算課税適用財産
(4)被相続人から相続開始前3年以内に取得した暦年課税適用財産

(1)は、お母さまのご認識のとおりの財産です。
(2)は、被相続人の財産ではないものの、被相続人の財産とみなされる財産で、代表的なものに生命保険金や(死亡)退職金があります。
(3)は、被相続人からの贈与について、「相続時精算課税」を選択したうえで贈与された財産を指します。
(4)は、被相続人からの贈与について、「暦年課税」を選択したうえで贈与された財産のうち、相続開始前3年以内に取得した財産を指します。
 
家の名義をお母さまから娘さまに変えるということは、お母さまから娘さまに家を贈与するということになります。贈与であれば、一般的に贈与税がかかりますが、上記(3)または(4)に該当する場合は、相続税の課税対象となります。
 

家を娘名義にしておくことは相続税対策として得策なのか?

お母さまがおっしゃるように、「家を娘名義にしておけば相続税がかからない」という場合もあります。前章の(3)(4)に該当しない場合です。しかし、その場合は贈与税の課税対象になります。
 
相続税と贈与税を単純に比較することはできませんが、参考程度に「娘が18歳以上」「家の評価額が4000万円相当」と仮定し、相続税と贈与税(暦年課税・特例贈与)の「基礎控除額」「税率」を比較してみます。結果は図表1のとおりです。
 
図表1

基礎控除額 税率
相続税 3000万円+600万円×法定相続人の数 10%
(区分「1000万円以下」)
贈与税
(暦年課税・特例贈与)
110万円 50%-415万円
(区分「4500万円以下」)

※国税庁「財産を相続したとき」「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」を参考に筆者作成
 
法定相続人が娘さま1人の場合、それぞれの税額は以下のとおりです。

相続税:[4000万円-(3000万円+600万円)]×10%=40万円
贈与税:(4000万円-110万円)×50%-415万円=1530万円

上記より、今回のようなケースでは、贈与税より相続税のほうが納税義務者にとって有利になることが多いのではないかと考えられます。そうであるなら、家を娘さま名義にすることは、相続税対策としては得策ではないといえるのではないでしょうか。
 
ちなみに、「相続」対策には(1)遺産分割対策、(2)納税資金対策、(3)相続税対策があり、検討すべき順序も(1)(2)(3)の順になります。(1)(2)を検討していないのであれば、こちらから検討するのがよいでしょう。
 

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まとめ

本記事では「家を娘名義にしておけば相続税はかからないのか?」「家を娘名義にしておくことは相続税対策として得策なのか?」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。

●家を娘名義にすると、相続税がかからない場合もあるが、かかる場合もある
●家を娘名義にしておくことは、相続税対策として得策とはいえない

本記事でのポイントは、「家の名義を母から娘に変えるということは、母から娘に家を贈与するということである」ということです。贈与した財産は、原則として贈与税の課税対象となりますが、場合によっては相続税の課税対象となります。
 
したがって、お母さまがおっしゃるように「相続税がかからない」ということもあり得ますが、その場合は贈与税がかかるかと思われます。税金の仕組み上、贈与税よりも相続税のほうが納税額は少なくなると考えられますので、「相続税がかからない」ということだけで名義変更(贈与)をしないようご留意ください。
 

出典

国税庁 相続税のあらまし
国税庁 財産を相続したとき
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
 
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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