実家の空き家を「0円」で譲りたいという親。贈与税はかからないのでしょうか?
しかし、不動産の無償譲渡は、たとえ家族間であっても贈与税の課税対象となる可能性があるので注意が必要です。
本記事では、実家を0円で譲渡する場合の贈与税について解説します。
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
0円での譲渡は「贈与」と見なされる
贈与税は個人から財産をもらったときにかかる税金で、もらった側が支払うものです。たとえ金銭のやり取りがなくても、不動産を無償で譲渡すれば、それは法律上「贈与」と見なされます。
不動産に関する贈与税の計算では、「市場価格」ではなく、固定資産税評価額や路線価などを基にした「課税評価額」によって贈与税が算出されます。つまり、仮に「古くて住めないボロ家だから0円にした」という場合でも、土地に価値が残っていれば贈与税が発生する可能性があるのです。
例えば課税評価額300万円の不動産を0円でもらった場合、税務上「300万円の贈与を受けた」ということになります。ただし、1年間に受けた贈与の総額のうち基礎控除額(110万円)までは、贈与税がかかりません。
上記の例では、1年間の贈与がこの不動産のみだった場合、300万円-110万円=190万円が課税対象になります。贈与税額は、190万円×贈与税率10%=19万円となります(※贈与税率は贈与を受けた金額が多いほど高くなります)。
親から子どもへの譲渡なら、税負担を軽減できる可能性も
一般的な贈与税の計算方法は上述のとおりですが、親から子どもへの譲渡の場合、一定の条件を満たせば税負担が軽くなるケースがあります。
【1. 贈与税の特例税率】
贈与税の計算では、父母から子(成人)への贈与など一定の場合に限り、それ以外の場合に適用される「一般税率」よりも負担が軽くなりやすい「特例税率」が適用されます。
【2. 相続時精算課税】
贈与があったときに税金をかけるのではなく、相続時に他の財産とまとめて計算できる仕組みです。贈与財産が2500万円までなら非課税になるのがポイントです。原則、60歳以上の父母などから18歳以上の子などに財産を贈与したときに適用できます。
【3. 住宅取得等資金の贈与の非課税特例】
父母や祖父母から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に適用できます。細かい要件が多数あるため確認が必要ですが、リフォーム費用として贈与を受けた場合など条件に合えば500万円まで(省エネ等住宅の場合には1000万円まで)の贈与が非課税になります。
なお、0円で譲渡して贈与税がかからなかった場合でも、不動産取得税や登録免許税は課せられますし、固定資産税も毎年支払っていくことになります。税金を完全にゼロにすることはできないと考えておきましょう。
まとめ
実家を0円で譲る場合でも、贈与税がかかる可能性があります。具体的には、譲渡する不動産の課税評価額が110万円を超える場合には注意が必要です。ただし、親から子への譲渡であれば税負担を減らすための措置が適用できるかもしれません。
たとえ贈与税が0円で済んでも、不動産取得税や登録免許税、その他の費用は発生することも知っておきましょう。「うちの場合はどうなる?」など詳しく知りたい場合は、税務署や税理士などに相談してみるとよいでしょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4602 土地家屋の評価
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
執筆者 : 馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表