「生前贈与」で父から「預金200万円」をもらったのですが、これも贈与税の対象になりますか? 手元に現金としてなければ問題ない?
今回の事例のように、父親から200万円の預金をもらったというケースでは、非課税枠である110万円を超えるため、贈与税が課されるのかどうかが気になるところです。
本記事では、贈与税の仕組みや課税対象となる場合、また非課税になる特例について分かりやすく解説します。
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目次
贈与税の基本:年間110万円の基礎控除
まず知っておきたいのは、贈与税には年間110万円の基礎控除があるという点です。これは1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与の合計が110万円以下であれば、贈与税はかからず申告も不要になるというものです。
したがって、今回のケースで父親から200万円をもらった場合、そのうち110万円を差し引いた残りの90万円が贈与税の課税対象となります。
預金でも贈与税の対象になるの?
現金の手渡しであっても銀行振り込みであっても、贈与として財産を受け取れば原則として課税の対象となります。つまり、預金という形で受け取った場合も贈与税の課税対象です。
「今は使っていないから大丈夫」「名義だけ自分にしただけ」という風に考える方もいるかもしれませんが、民法第549条によれば、「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と定められています。
そのため、今回の事例では、父親が預金を無償で与えてくれることを自身が受諾した時点で贈与にあたるとみなされる可能性があります。手元に現金としてなければ課税されないと考えるのは誤解であり注意が必要です。
実際に課税される金額の試算
それでは実際に課税される金額を計算してみましょう。父親から200万円を贈与された場合、基礎控除110万円を差し引いた課税価格は90万円です。この90万円に対して暦年課税の税率が適用されます。
国税庁によれば、直系尊属から18歳以上の子どもや孫などへ贈与があった場合には「特例税率」が使われ、課税価格が90万円の場合は「200万円以下」の区分に該当するため、税率は10%で控除額はありません。
結果として90万円に10%をかけた9万円が贈与税額となります。つまり、今回のケースでは、200万円の贈与で実際に支払う贈与税は9万円という計算になります。
手元に現金が残っていなくても課税対象?
ここで気になるのが、「すでに使ってしまって現金が残っていない」というケースです。しかし贈与税は受け取った時点で課税関係が発生するため、使ってしまったかどうかは関係ありません。たとえ別の用途に回してしまっても、受け取った事実があれば税務上は贈与として扱われます。
ただしすべての贈与が課税されるわけではなく、生活費や教育費のために、必要に応じてその都度、直接支払われた場合は課税対象外とされます。
例えば、学費として父親が直接学校に納めたお金や、生活に必要な家賃を立て替えたお金などに対しては、贈与税はかからないでしょう。しかし、生活費や教育費を名目として預金口座に振り込まれ、それを使わず貯金した場合や株式購入などに充てた場合には課税の対象となります。
贈与税がかからない主な特例
一定の条件を満たすことで、一定額まで贈与税がかからない特例も存在します。
例えば、「相続時精算課税制度」を使えば、相続時精算課税に係る基礎控除額110万円を控除したうえで、最大2500万円までの贈与については贈与税がかからず、相続時にまとめて精算されます。
また、住宅取得等資金として父母や祖父母などから贈与を受ける場合には、一定の要件を満たせば最大1000万円まで非課税になる制度があります。
さらに、直系尊属から教育資金を一括で贈与する制度では最大1500万円まで、結婚や子育て資金の一括贈与では最大1000万円までが非課税とされています。これらは専用の契約や口座開設などが必要ですが、条件を満たせば大きな税負担を避けることが可能です。
まとめ:200万円の預金贈与は課税対象になると考えられる
父親から預金200万円を贈与された場合、今回のケースでは、基礎控除を差し引いた90万円に対して贈与税が課税され、その額は9万円となるでしょう。現金が手元にあるかどうかは関係なく、受け取った時点で贈与税の課税対象になることに注意してください。
ただし生活費や教育費として直接充てられる支出であれば課税対象外となり、住宅資金や教育資金など目的別に設けられた制度を利用すれば非課税枠を活用できる場合もあります。
贈与は親子間でよく行われるものですが、税制上は思わぬ課税を招くことがあります。大切なのは「現金が手元にあるかどうか」ではなく「贈与として受け取ったかどうか」という点です。
もし迷う場合や金額が大きい場合には、早めに税務署や税理士などに相談し、適切に手続きを行うことをおすすめします。
出典
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三編 債権 第二章 契約第二節 贈与 第五百四十九条(贈与)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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