高校生の子どもが「私立理系」に進学希望ですが、家計に余裕がありません…。両親から“300万円”支援してもらおうと思いますが「贈与税」はかかりますか?
本記事では、贈与税のかからない贈与の方法について解説します。
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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私立大理科系の学費
文部科学省の調査によると、私立大学理科系の初年度納付金は160万8576円となっています。初年度学生納付金は、入学料、授業料、施設設備費、実験実習料、その他の費用の合計です。
初年度納付金160万8576円の内訳は、入学料23万4756円、授業料116万2738円、施設設備費13万2956円、実験実習費3万6835円、その他4万1290円です。
私立大は国公立と異なり、学部間で学費が大きく異なるのが特徴です。文科系の初年度納付金は127万5749円ですので、理科系とは33万2827円もの差があります。これが4年間になると、文科系では約443万円、理科系では約573万円と約130万円の差です。
大学には、独自の給付型奨学金や授業料減免制度があるので、家計に余裕がなければ、これらの学費支援策も活用しましょう。
暦年贈与
暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の価額が基礎控除額110万円を超えた金額に受贈者に贈与税を課すものです。
例えば、祖父母から18歳以上の孫へ一括で300万円を贈与した場合の贈与税は、(300万円-110万円)×15%-10万円=18万5000円です。
基礎控除額110万円以下であれば、贈与税は課されず、申告も不要です。そうすると、300万円を毎年100万円ずつ3年間贈与しようと考えるかもしれません。
しかし、毎年同じ金額を贈与し続けると「定期贈与」とみなされ、年間の贈与額が110万円以下であっても、課税回避のため300万円を分割で渡したとして、贈与税が課税されてしまう場合がありますので注意が必要です。
「定期贈与」とみなされないためには、毎年、贈与契約書を作成し、贈与する金額や時期を毎年変更するとよいでしょう。
教育資金の「必要な都度直接」贈与
贈与税は、原則として贈与を受けたすべての財産が対象です。しかし、その財産の性質や贈与の目的などからみて、贈与税がかからない財産もあります。
例えば、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費として、「必要な都度直接」もらったお金には贈与税がかかりません。つまり、祖父母から孫への贈与が110万円を超えても、教育資金として「必要な都度直接」もらう場合、贈与税がかかることはありません。
ただし、教育資金の名目で贈与を受けた場合であっても、実際に教育資金として使わず、預金をしたり、株式や不動産などの購入資金に使ったりした場合は課税されますので注意しましょう。
この贈与方法のポイントは、「必要な都度直接」渡す点です。面倒くさいからといって、教育資金でも数年分まとめて渡すと、贈与税が課税される場合がありますので注意しましょう。また、教育資金として使ったことが証明できるように金融機関経由で振り込むことや、領収書等を保管しておくことも大切です。
教育資金の一括贈与
教育資金を「必要な都度直接」渡すのは面倒くさいので、まとまった金額を渡したいという場合には、「教育資金の一括贈与」という制度があります。
この制度は、令和8年3月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から30歳未満の子や孫に「教育資金」の贈与をした場合、1500万円(習い事などは500万円)まで贈与税が非課税になる制度です。「教育資金」の具体例としては、入学金、授業料、施設設備費、入学試験の検定料などがあります。
この非課税制度の適用を受けるためには、以下の手続きが必要です。
まず、贈与者(祖父など)と受贈者(孫など)間で贈与契約書を作成します。受贈者は、金融機関で教育資金贈与専用の口座を開設します。贈与者は、「教育資金非課税申告書」をその口座の開設等を行った金融機関等に提出する必要があります。この申告書は、金融機関経由で納税地の所轄税務署長に提出されますので、贈与者は税務署に行く必要はありません。
その後、贈与者は資金を口座に入金します。受贈者は支払った領収書等を金融機関に提出し、教育資金口座からお金を引き出します。なお、金融機関によっては、必要な資金を先に引き出して、後日、領収書等をまとめて提出もできます。
まとめ
私立大学理系の初年度納付金は約160万円、4年間で約573万円の学費がかかります。入学前には入学手続き時納付金、教科書・パソコン購入費など100万円以上のお金が必要になります。
入学前の資金不足には奨学金が利用できませんので、手持ちの資金では賄えなくなる場合もあるでしょう。その際、両親(子どもの祖父母)から援助してもらえば助かりますが、気になるのが贈与税ではないでしょうか。本記事では、贈与税がかからない方法を紹介しましたので参考にしてください。
出典
文部科学省 私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。