帰省時に父から「現金200万円」の生前贈与!「タンス預金だから税金は大丈夫」と言いますが、本当ですか? 税務署に指摘されないか心配ですが、課税される場合いくらかかるのでしょうか?
結論としては、タンス預金であっても、贈与として一定額以上を受け取れば贈与税の課税対象になります。さらに、申告を怠って税務署に指摘されれば、延滞税や加算税などのペナルティを科される可能性があるため、正しい申告と納税は必須です。
本記事では、タンス預金と贈与税の関係、200万円を受け取った場合の税額、そして無申告時のリスクについて解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
タンス預金は問題ないが、贈与税は別問題
まず、現金を自宅で保管する、いわゆる「タンス預金」自体は違法ではありません。例えば、給料の一部を引き出して自宅に保管しているだけであれば、その給料を受け取った時点で所得税や住民税が課税されており、改めて税金を支払う必要はないのです。
一方で、贈与税は財産を無償で譲り受けた場合に、贈与を受け取った人に対して課税されます。現金の保管方法や渡し方は関係ありません。銀行振り込みであっても手渡しであっても、タンス預金からであっても、贈与として受け取った金額が年間110万円(基礎控除)を超えれば、超えた部分が贈与税の課税対象となります。
タンス預金であっても税務署は贈与があったことを把握できると言われています。理由はKSK(国税総合管理システム)を使って納税者の財産状況をおおむね把握できていること、税務署に金融機関の預金口座を調査する権限が与えられていることなどさまざまです。
専門家の中には、「税務署は100万円以上の不正な出金に目を光らせている」と言う人もいます。タンス預金であっても200万円というお金を動かすと、税務署の調査対象となる可能性は十分にあります。
「タンス預金だからバレない」と考える人もいるようですが、これは根拠のない思い込みに過ぎません。
200万円贈与時の税額と無申告のリスク
贈与税は超過累進課税が採用されています。例えば、父から18歳以上の子どもに贈与する場合、200万円以下の部分の税率は10%、400万円以下の部分には15%、600万円以下の部分には20%といった具合に、贈与を受けた額が増えれば増えるほど税率が最大55%まで上がる仕組みです。
ただし贈与税には年間110万円の基礎控除があり、この部分には贈与税がかかりません。200万円の贈与を受けた場合に課税対象となるのは、110万円の基礎控除を除いた90万円です。
今回のケースにおいて、この数字は200万円以下の部分に当たるので税率は10%で、9万円の贈与税がかかります。これを贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに確定申告をして納めなければなりません。
もし申告を怠ると、次のようなペナルティが発生します(贈与税額が9万円の場合)。
・延滞税:納期限の翌日からの日数に応じて加算される税金。2025年分は年8.7%(納期限から2ヶ月以内は2.4%)の利率で計算
・無申告加算税:原則15%(税務署による調査の事前通知前に自主申告すれば5%、調査の事前通知から調査による決定までに自主申告すれば10%に軽減)
また、悪質だと判断された場合は重加算税が課されることもあります。重加算税は本来支払うべき贈与税額の35%以上となる大きなものです。
「親が贈与税を払わなくてよいと言ったから」という理由は通用せず、贈与税の申告義務は受け取った本人が負うことを忘れてはいけません。
まとめ
タンス預金かどうかは、贈与税がかかるかどうかに一切関係ありません。「タンス預金ならばれないから贈与税はかからない」という考えは誤りです。父から200万円を受け取れば、基礎控除を引いた90万円に対して贈与税9万円が課税されます。
申告を怠れば、延滞税や無申告加算税、さらに悪質と判断されれば重加算税まで発生し、経済的な負担は想像以上に大きくなるのです。贈与を受けたら、親の認識や意思にかかわらず、受け取った本人が期限内に正しく申告・納税することが、将来のトラブルを避けるために必要と言えるでしょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士