祖母が貯めたタンス預金500万円を毎年100万円ずつ送金してくれるそうです。「110万円以下だから税金は心配ない」というのですが、本当に大丈夫でしょうか…?
本記事では、生前の家族間送金における税金の取り扱いや注意点について解説します。
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目次
生前の家族間送金は「贈与」とみなされる
個人の死後に財産を引き継ぐことを「相続」というのに対し、生前に財産を引き継ぐことを「贈与」といいます。財産を受け取る側には贈与税が課せられます。
贈与税の課税方法には以下表1の通り2種類あり、それぞれの状況に応じて選択が可能です。
表1
| 概要 | 税率 | |
|---|---|---|
| 暦年課税 | 1年間の贈与金額に基づき贈与税を計算・納付する制度 | 10〜55% |
| 相続時精算課税 | 1年間の贈与金額に基づき贈与税を計算・納付し、贈与者の死亡時に相続税で精算する制度 | 20% |
※筆者作成
なお、相続時精算課税を選択できるのは、以下の条件に当てはまる場合に限られます。
●贈与者:贈与をした年の1月1日において60歳以上(父母や祖父母など)
●受贈者:贈与を受けた年の1月1日において18歳以上かつ贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人または孫
年間110万円までの贈与は原則非課税
贈与税の計算では、110万円の基礎控除が適用されます。つまり、贈与を受けた金額が年間110万円以下の場合、贈与税は非課税です。
ただし、これはあくまで原則であり、1年間の贈与額が110万円以下でも課税対象となるケースもあることに注意しましょう。
年間110万円以下でも贈与税がかかる場合とは?
家族から贈与された財産が基礎控除(年間110万円)を下回る場合でも、以下のようなケースでは贈与税が課せられます。
定期金給付契約に基づく贈与とみなされる場合
毎年の贈与が定期金給付契約に基づくものである場合は、年間の贈与額が110万円以下でも贈与税の対象です。定期金給付契約とは、あらかじめ決まった金額を分割して、定期的に贈与する契約のことです。
つまり、贈与者と受贈者との間で「合計○万円を毎年○万円ずつ分割して渡す」という契約(約束)であれば、その金額が年間110万円以下でも贈与税が課されます。
合計500万円を毎年100万円ずつ贈与する場合は定期金給付契約とみなされ、税金が発生するおそれがあるため注意が必要です。本人同士で約束したことであっても、相続税の調査過程などで疑わしいところがあった場合、税務署から問い合わせの手紙が届く可能性があります。
なお、総額を決めずに毎年110万円以下を贈与する場合であれば、税金を気にする必要はありません。ただし、定期贈与ではないことを証明するために「贈与契約書」を作成しましょう。
複数人からの贈与の合計額が110万円を超える場合
贈与税の基礎控除は、1年間に贈与を受けた金額の合計額に対して適用されます。
祖母から100万円を贈与された場合、祖父や父母などからも贈与を受けると、その合計額が110万円を超えれば贈与税の対象です。
基礎控除以外に利用できる控除・非課税制度
祖母から孫への贈与における贈与税の計算では、基礎控除以外にも次のような制度を利用できる場合があります。
相続時精算課税の特別控除
贈与税の課税方法のうち、相続時精算課税を選択する場合は、基礎控除110万円とは別に特別控除2500万円が適用されます。
ただし、相続時精算課税制度の本質は「納税の先送り」であり、直接的な節税効果はありません。贈与者が亡くなり相続が発生した際には、これまで贈与した財産も含めて相続税を計算します。
住宅取得や増改築費用などの贈与の非課税
父母や祖父母などの直系尊属から、家の新築や購入、増改築などの費用として贈与を受けた場合、贈与額が500万円(省エネ性能やバリアフリー性能などを有する住宅の場合は1000万円)までなら贈与税が非課税となる制度です。
また、住宅取得などの資金援助の贈与について一定要件を満たす場合は、贈与者が60歳未満であっても相続時精算課税を選択できます。
教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与の非課税
30歳未満の孫の教育資金や、18歳以上50歳未満の子や孫の結婚・子育て資金として金銭を一括贈与する場合に、一定金額までは非課税です。教育資金の場合は1500万円、結婚・子育て資金の場合は1000万円までが非課税となります。
毎年100万円ずつの送金は原則非課税
祖母から孫への総金額が年間110万円以下の場合、基本的に贈与税が課せられる心配はありません。しかし、あらかじめ贈与の総額が決まっており、それを分割して送金しているとみなされた場合は、定期金給付契約に基づく贈与とされ課税対象となる場合があります。
なお、複数人から贈与を受ける場合は、個別の金額ではなく、合計額が110万円を超えないよう注意が必要です。
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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