父が「葬儀費用は口座の200万円から」と遺言したのに、死亡後に口座が凍結! 200万円の引き出しは“違法”なのか?「凍結解除」の方法も解説

配信日: 2025.09.05
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父が「葬儀費用は口座の200万円から」と遺言したのに、死亡後に口座が凍結! 200万円の引き出しは“違法”なのか?「凍結解除」の方法も解説
葬儀費用に充てるため、父親の口座から預金を引き出すことに決めたが、「故人の預金口座は凍結されるため、簡単に引き出すことはできない。仮に引き出せたとしても罪になるのでは?」と、耳にしてお困りの人もいるのではないでしょうか?
 
本記事では、故人の口座から預金を引き出すことが違法にあたるのかどうか? 故人の口座が凍結される前に引き出すことは可能か、凍結解除の方法について解説します。
三枝徹

さえぐさ編集事務所 代表
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口座凍結前の引き出しは可能だが、相続トラブルの原因に

口座の名義人が死亡したときに、自動的に口座凍結がなされるわけではなく、通常は近親者が金融機関に死亡連絡をしなければ口座凍結はされません。そのため、金融機関に死亡連絡をする前であれば、預金引き出しは可能です。
 
また、故人の家族や同居する親族が、故人の口座から預金を引き出すことは、窃盗罪や横領罪などには問われないというのが、法的な見解です。
 
しかし、罪には問われないものの、故人の預金は遺産相続対象になるため、一部の家族・親族が勝手に預金を引き出してしまうと2つの問題が発生します。1点目は相続上のトラブルを引き起こしてしまう懸念があること、2点目は相続が「単純承認」と見なされてしまうことです。
 
単純承認の場合、故人の正の財産(預金・土地など)と、負の財産(借金)の両方を相続しなければなりません。そのため、故人に多額の借金があるといったときでも、相続放棄を選ぶことができなくなってしまいます。
 
このように、口座凍結前に故人の口座から預金を引き出すことには、さまざまな問題が起こりかねません。そのため、金融機関に死亡連絡を行い、まずは口座凍結を行うほうがよいと言われています。
 

遺産分割前でも預金は引き出せる? 制度と注意点を解説

一般的に、故人の口座を凍結解除するタイミングは、すべての遺産分割が完了した後になります。しかし、遺産分割協議には時間がかかるため、口座の凍結解除をすぐに行うことは困難です。
 
一方、葬儀費用や相続人の当面の生活費などは、なるべく早く確保したいという、相続人のニーズもあります。そこで、民法などの改正により2019年7月1日より、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」が設けられました。
 
この制度を活用することで、遺産分割が完了する前であっても、相続人が相続預金の払戻しを受けられるようになりました。払戻しには「家庭裁判所の判断が必要なケース」と「不要なケース」の2種類があります。
 
一般的に、同一の金融機関からの引き出し金額が150万円以下のときには、家庭裁判所の判断は不要であり、引き出し金額が150万円以上のときは家庭裁判所の判断が必要です。
 
家庭裁判所の判断が不要なときも、預金引き出しにおいては金融機関に相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書などが必要となるため、手続きには時間がかかることが想定されます。家庭裁判所の判断が必要なときは、さらに時間がかかるため、注意が必要です。
 
今回の事例では、故人の口座から200万円を引き出したいため、家庭裁判所の判断が必要なことから、預金引き出しまでにはかなりの時間がかかると思われます。そのため、正式な凍結解除手続きを選ぶか、払戻し制度を使うかは慎重な判断が求められるでしょう。
 

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遺産分割後の口座凍結解除に必要な書類と手続きの流れ

相続人の間で遺産分割がまとまり、故人の口座から預金を引き出すことになったときには、口座の凍結解除を金融機関に申し出て手続きをします。
 
凍結解除を行うためには、次の書類が必要です。なお、手続きに必要な書類は相続方法や銀行によって異なります。本記事では遺言書がある場合の、一般的な金融機関のケースを紹介します。
 
この場合、必要な書類は以下の5点です。
 

・遺言書(原本)
・家庭裁判所の検認済証明書(公正証書遺言、自筆証書遺言保管制度を利用の場合は不要)
・戸籍謄本(口座名義人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、法定相続人を確認できるすべての戸籍謄本)
・印鑑証明書(預金の相続人の印鑑証明書)
・通帳(証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む)

 

故人の預金を安全に引き出すために知っておきたい手続きと注意点

家族・同居の親族であれば、故人の預金口座から引き出しをしても、一般的には罪に問われないことが分かったのではないでしょうか。
 
今回の事例のように、故人の預金口座から葬儀費用として200万円引き出す場合は、相続のトラブルが起きないように、まずは故人の預金口座を凍結します。そして、遺産分割前の相続預金の払戻し制度または、口座凍結の解除手続きを行い、口座から引き出すことになります。
 
いずれの方法でも一定の時間がかかるため、必要な書類や手続きの流れは事前に確認しておくことをおすすめします。
 

出典

三井住友信託銀行株式会社 口座凍結される理由と解除に必要な手続き方法
一般社団法人全国銀行協会 遺産分割前の相続預金の払戻し制度のご案内チラシ
 
執筆者 : 三枝徹
さえぐさ編集事務所 代表
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP

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