祖父母から「学資保険300万円」を出産祝いでもらったら、“贈与税”はかかる?「110万円枠」「教育資金特例」「契約者設定」の落とし穴まで解説
本記事では、祖父母から300万円の学資保険を贈られたケースを想定し、贈与税の基本から非課税にする方法、そして見落としがちな契約時の注意点まで解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
300万円の学資保険は原則として贈与税の対象
祖父母から300万円の学資保険を1度に贈与された場合、原則として贈与税がかかります。個人から年間110万円を超える財産を受け取ると、その超えた金額に対して贈与税が課されるためです。年間110万円までの贈与であれば、暦年課税制度の基礎控除が適用されます。
300万円の学資保険は、基礎控除である110万円を大きく上回るため、申告と納税が必要になります。では、贈与税がどの程度かかるのか計算してみましょう。
まず、課税対象となる金額を算出します。
300万円(贈与額)−110万円(基礎控除)=190万円
次に、国税庁が定める税率をかけます。課税価格が200万円以下の場合、税率は10%です。
190万円×10%=19万円
この計算により、約19万円の税金を納める必要が生じます。せっかくのお祝いが家計の負担とならないよう、贈与の方法を工夫して非課税にする方法も確認しておきましょう。
贈与税を非課税にする2つの方法
祖父母からの支援を非課税で受け取り、子どもの将来のために最大限活用するにはどのようにすればよいでしょうか。ここでは有効な2つの方法を紹介します。
1つ目は、学資保険の契約者を子どもの親にし、保険料の支払いを祖父母が援助する方法です。具体的には、祖父母から毎年110万円の基礎控除の範囲内で、保険料に該当する金額を贈与してもらいます。
例えば、5年間で総額300万円の保険料を支払う場合、毎年60万円ずつ5年間にわたって贈与を受け取ります。その中から保険料を支払えば、毎年の贈与額は110万円以下に収まるため、贈与税はかかりません。このとき、毎年の贈与契約書を作成しておくと、税務上のリスクをさらに軽減できます。
2つ目は、「教育資金の一括贈与に係る非課税措置」を活用する方法です。これは、30歳未満の子どもや孫へ、父母や祖父母から最大1500万円までの教育資金を非課税で一括贈与できる制度です。金融機関で専用口座を開設し、祖父母からその口座へ300万円を振り込んでもらい、そこから保険料を支払います。
この特例を使えば、300万円を一括で受け取っても非課税となります。ただし、この制度は、2026年3月31日までの期間限定の措置であり、資金の使い道は教育目的に限られます。また、孫が30歳になった時点で口座に残高がある場合、その残高に贈与税がかかるため注意が必要です。
多くの人が見落とす契約者設定の「落とし穴」
学資保険で最も注意したいのが、「契約者(保険料を支払う人)」と「受取人(満期保険金を受け取る人)」を誰に設定するかという点です。この設定によって、かかる税金の種類が変わります。
問題が起こりにくいのは、契約者と受取人を同一人物(例えば父親)に設定するパターンです。
・契約者:父
・被保険者:子ども
・受取人:父
この場合、父が支払った保険料が父に戻るだけなので、贈与税はかかりません。ただし、受け取った満期保険金の利益部分には「所得税」がかかります。
注意したいのが、保険料を祖父が支払い、受取人を親や子ども(契約者の祖父にとっての孫)にするケースです。
・契約者:祖父
・被保険者:子ども
・受取人:子ども
この設定では、保険料を支払っていない人が満期保険金を受け取るため、満期保険金そのものが「贈与」とみなされます。金額が110万円を超えれば贈与税の対象となるため、注意が必要です。
学資保険の贈与で失敗しないための重要ポイント
祖父母から300万円の学資保険という大きなお祝いを一度に受け取ると、原則として約19万円の贈与税が発生します。ただし、過度に心配する必要はありません。
学資保険の契約者を親にし、毎年110万円の基礎控除内で保険料の援助を受ける方法や、「教育資金の一括贈与に係る非課税措置」を活用する方法で、非課税にできます。
最も大切なのは、保険料を支払う「契約者」と満期保険金を受け取る「受取人」を誰にするかという点です。この設定を誤ると、将来思わぬ税負担が生じる可能性があります。祖父母からの温かい支援を孫の未来に最大限活かすためにも、税金について正しく理解し、家族で話し合って最適な方法を選びましょう。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
執筆者 : 山口克雄
2級ファイナンシャル・プランニング技能士