子ども名義の銀行口座に児童手当を貯金しています。18歳になったら全額わたそうと思っているのですが、贈与税はかかりますか?
なかには、「子ども名義の銀行口座に毎月貯金し、18歳になったら全額をわたす」という方法を検討している家庭もあるでしょう。
ところが、この方法には思わぬ落とし穴があります。児童手当は「子どものために支給されている」と思われがちですが、法律上は「親に支給されるもの」として扱われています。貯め方やわたし方によっては「贈与」と判断され、贈与税の課税対象になる可能性もあるのです。
本記事では、児童手当を子どもに一括でわたす際に生じるおそれのある課税リスクと、その防ぎ方について、FPの視点から解説します。
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者/中小企業診断士
新卒で警察官としてキャリアをスタート。その後、都内税理士法人で勤務し、多くの企業の経理業務を手がけた経験を活かして独立しました。現在は、「会社のお金」と「家庭のお金」をワンストップで相談できるパートナーとして活動しています。
小学生の子どもを育てるママでもあり、ライフプラン作成やキャッシュフロー分析など、個人やご家庭向けの具体的で実用的なアドバイスを提供しています。
企業経理相談や経営分析にも精通しており、これまでの経験を基に、経営者が抱えるお金の悩みに幅広く対応。さらに、執筆やセミナー活動も行い、「知って得するお金の知識」を届けています。お金の管理や経営に関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
子ども名義の口座に貯めるとどうなる?
児童手当を子ども名義の銀行口座に貯めている場合、そのお金は本当に「子どものもの」になるのでしょうか?
実は、たとえ子ども名義の口座に貯めていたとしても、子どもがその口座の存在を知らず、親が通帳や印鑑を完全に管理している場合、税務上は「親の資産」とみなされやすいのです。これがいわゆる「名義預金」と呼ばれるもので、贈与税や相続税の調査においてもしばしば問題視されます。
また、2024年10月から児童手当の支給期間が高校卒業まで延長されたことから、0歳から満18歳の年度末まで受給した場合の総額は、200万円以上になるケースも珍しくありません。
このように金額が大きくなるため、18歳になった子どもにまとめてわたすと、その時点で贈与が成立したとみなされ、基礎控除110万円を超える分に対して贈与税が課される場合があるのです。
どういう場合に贈与税がかかるの?
贈与税は、たとえ親子間であっても、年間110万円を超える金銭や財産をわたした場合に発生します。つまり、児童手当をまとめて一括でわたすことは「贈与」とみなされやすい行為なのです。
「生活費や教育費として貯めていたお金をわたすだけ」と考える方もいるかもしれませんが、ここにも落とし穴があります。
税務上では、「実際に必要な都度に支出した生活費や教育費」であれば非課税とされますが、長年積み立てたお金を一括でわたす場合、それは「生活費」としてわたしたものであったとしても「贈与」と判断されることがあるのです。
贈与税を避けるには? 2つのポイント
では、児童手当を18歳以降に安心してわたすにはどうすればよいのでしょうか。ポイントは「もともと子どものお金である」という実態を早めに作っておくことと、一度に大きな金額をわたさない工夫をすることです。
まず1つ目は、「本人に早い段階で口座の存在を伝える」ことです。まだ未成年の間は管理能力が十分ではないため、親が通帳や印鑑を預かるのはよくあることですが、その際も「これはあなたの児童手当を貯めている口座だよ」と伝えておくことが重要です。本人が口座の存在を認識していれば、名義預金とされるリスクを下げられます。
2つ目は、「わたすタイミングと金額を工夫する」ことです。仮に本人に知らせていなかった場合でも、18歳になってから一括でわたすのではなく、数年に分けて110万円以内の金額ずつわたすようにすれば、贈与税の基礎控除の範囲内に収めることができます。
まとめ
児童手当は、子どもの将来を支えるための大切な資金です。しかし、その管理方法やわたし方を誤ると、「親のお金を後から贈与した」とみなされ、贈与税の課税リスクが発生してしまうおそれがあります。
特に、「18歳になったらまとめてわたす」といった方法は、税務上は一括贈与として扱われやすく、注意が必要です。早い段階から子どもに口座の存在を伝えておいたり、数年に分けて少しずつわたしたりなど、ちょっとした工夫をしておくことでリスクを減らすことができます。
「子どものために貯めてきたのに課税されるなんて……」と後悔しないためにも、日頃からの管理の仕方とわたし方への配慮が大切です。未来のためにコツコツ貯めたお金が、確実に子どもの手元に届くよう、今のうちから意識して準備しておきましょう。
出典
国税庁 財産をもらったとき
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者 : 富澤佳代子
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者/中小企業診断士