「生前贈与」で大損する人が続出!?「100万円は非課税」のウラで“新7年ルール”が相続税を激増させる?「加算される・されない贈与」とは
相続開始前の贈与のタイミングによっては、「相続税が増えてしまうのでは?」と不安に思う人もいるのではないでしょうか。しかし、必ずしも全てが課税されるわけではなく、加算される贈与と加算されない贈与が存在します。
本記事では、改正された7年ルールの仕組みを正しく把握し、加算される贈与と加算されない贈与の違いを分かりやすく解説します。最新のルールを正しく理解し、税負担を軽くするための参考にしてください。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
「7年ルール」の詳細は?
2023年度の税制改正で、生前贈与を相続財産に加算する期間は、従来の「死亡前3年以内」から「死亡前7年以内」へと拡大されました。ただし、すぐに一律で7年になるわけではなく、相続が始まる時期によって段階的に適用されます。
具体的には、2026年12月31日までに相続が始まる場合は従来どおり3年以内、2027年から12年12月31日までの間は「2024年1月以降の贈与」が、そして2031年以降は完全に7年以内が対象となります。
しかし、いずれの場合も、死亡前3年以内の贈与は加算される点に注意が必要です。さらに、2027年以降は4~7年前の贈与も、その4年間の合計から100万円を超える部分が加算対象となります。
毎年110万円以内の暦年贈与で贈与税がかからなかった場合でも、期間内の贈与なら相続税に含まれるため、注意しましょう。
「100万円控除」と「110万円基礎控除」は何が違う?
生前贈与には「100万円」と「110万円」という似た数字が出てきて混同しがちですが、この2つは適用される場面も役割も異なります。
まず、2027年から2030年の経過措置として設けられた「100万円控除」は、死亡前4~7年に行われた贈与の合計額から、100万円を差し引いた残りを相続財産に加算するという仕組みです。例えば、4年間に合計400万円を贈与していれば、そのうち100万円は控除され、300万円が加算されます。
一方、「110万円基礎控除」は暦年贈与における贈与税のルールで、毎年110万円までは贈与税がかかりません。ただし、この範囲内で贈与税がかからなかった年でも、加算期間に含まれる場合は相続税の対象となる点に注意が必要です。
「100万円控除」と「110万円基礎控除」を混同すると、想定外に相続税が膨らんだり、贈与の計画自体を誤ってしまったりする危険があります。だからこそ、両者を正しく整理して理解することが欠かせません。
加算されない贈与財産の範囲
新ルールでは加算対象が広がりましたが、全ての贈与が相続財産に持ち戻されるわけではありません。生前に贈与された財産であっても、「加算されない贈与財産」もあります。
代表的なものとしては、配偶者への居住用不動産や居住用資金の贈与の特例を受けた財産、直系尊属からの住宅取得資金の贈与で非課税とされた部分、教育資金の一括贈与で非課税とされた部分、そして結婚・子育て資金の非課税贈与などです。
これらは、制度趣旨に沿って使われる限り加算の対象外となりますが、非課税枠を超えた部分や、残額の管理に不備がある場合は加算されることがあるので注意しましょう。加算される贈与とされない贈与を正しく区別して活用することが、無駄な税負担を避けるためのポイントです。
まとめ
2024年の改正で加算対象が7年に広がったことで、従来よりも相続課税額が増える可能性は高まりました。死亡前3年以内の贈与は必ず加算され、2027年以降は4~7年前の贈与も一部対象となります。
ただし、配偶者への居住用不動産や教育資金など制度に基づく非課税贈与は除かれます。制度を正しく理解し、計画的に贈与すれば「激増」を避けることは十分可能です。早めに仕組みを理解して準備しておくことが、安心した相続につながるのではないでしょうか。
出典
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種