8年前に、孫の教育資金として「400万円」を預けた口座があります。大学進学の5年後までそのままにしておくつもりですが、問題ないでしょうか?
本記事では、教育資金を安心して孫に渡すために知っておきたい税制や制度のポイントを解説します。
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教育資金を孫に渡すと贈与税がかかる?
祖父母が孫にお金を渡す場合、基本的には贈与税の対象となります。贈与税は、1年間に110万円を超える金額を個人から受け取った場合に課税される税金です。
たとえば、400万円を一括で渡した場合は、110万円を超えた分に対して贈与税がかかります。ただし、教育資金として渡す場合は例外があります。それが「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度」です。
この制度を利用すれば、孫1人あたり最大1500万円まで、贈与税がかからずに教育資金として渡すことができます。非常に有利な制度ですが、いくつかの条件や手続きがあるため注意が必要です。
「預けただけ」では非課税にならない場合もある
今回のように、8年前に400万円を孫の教育資金として「預けた」場合、そのお金の名義や管理方法によっては、制度が適用されない可能性があります。
よくあるのが、「孫名義の口座に入れたけれど通帳や印鑑は祖父母が管理している」というケースです。このような場合、名義預金と判断され、形式上は孫への贈与になっていないとみなされることがあります。
また、「祖父母の口座に入れたまま」の場合は、贈与そのものが完了していないため非課税制度の対象外となります。
つまり、「教育資金として渡すつもりだった」という気持ちだけでは、税務上の優遇は受けられないのです。
教育資金の非課税制度を使うならここに注意
教育資金の一括贈与非課税制度を利用するには、以下のような要件を満たす必要があります。
・受贈者(孫)が30歳未満であること
・金融機関で「教育資金管理契約」を結び、専用口座に資金を拠出すること
・教育費として使ったことを証明するために、領収書などを提出すること
この制度は、対象者1人あたり1500万円まで非課税で渡せる非常に有利な制度ですが、制度を利用する時点で契約・口座開設・資金拠出をすべて行う必要があります。
つまり、8年前にこの制度を利用していなければ、そのままでは非課税扱いになりません。制度を利用するには、新たに手続きを行う必要があります。
また、制度の適用期限は過去何度か延長されてきていますが、2023年度の改正で2026年3月31日までとされています。現時点では、5年後は期間外のため、今後の利用を考えている場合は、定期的に制度の最新情報を確認し、早めの準備をすることが大切です。
まとめ:制度の活用で安心して孫に資金を届けよう
教育資金を早めに準備することは心強い支援ですが、「預けただけ」では贈与が成立していなかったり、名義預金とみなされたりして、非課税制度を利用できない場合があります。 教育資金の一括贈与非課税制度を使うには、専用口座の開設や金融機関との契約、領収書による支出証明など、いくつかの要件を満たすことが欠かせません。
今回のように8年前に預けた資金については、当時制度を利用していなければ非課税扱いにならない可能性があります。そのため、まずは口座の名義や契約形態を確認し、必要であれば専門家や金融機関に相談することが大切です。
今後さらに教育資金を準備する予定があるなら、最新の制度内容をチェックして早めに手続きを進めることで、税務上も安心して孫に資金を届けられます。
出典
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー