実家の片づけ中に「500万円」が入金されている父名義の定期預金通帳を見つけました。父の死後すでに“1年以上”たっているのですが、相続手続きをしないと問題になりますか?

配信日: 2025.09.21
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実家の片づけ中に「500万円」が入金されている父名義の定期預金通帳を見つけました。父の死後すでに“1年以上”たっているのですが、相続手続きをしないと問題になりますか?
父が亡くなり、相続人全員で遺産分割協議を行い、申告期限内(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)に相続税の申告・納税を完了しました。その後に新たな財産(500万円の定期預金)が発見された場合、どのような対応が必要となるのでしょうか?
高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

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未分割財産について再度遺産分割協議を行う

一般的な対応としては、未分割財産(500万円の定期預金)について、再度遺産分割協議を行うことになります。一度の遺産分割協議で全ての被相続人の財産を網羅し、漏れなく遺産分割を行うことが理想ですが、今回のケースのように遺品整理などの際に新たな財産が発見されることも多いようです。
 
遺産分割協議を完了した場合、その効力は相続開始時にさかのぼって生じることとなります。そのため、新たに発見された財産は未分割財産として、新たに発見された財産についてのみ相続人全員で遺産分割協議を行い、合意を得ることが必要となります。
 
ただし、再度の遺産分割協議の手間を避ける目的で、当初作成した遺産分割協議書に「この余の財産は相続人○○が全て取得する」などの文言を記載しているケースもあります。この場合には、原則、遺産分割協議を行う必要はありません。
 

遺産分割協議をやり直す場合の注意点

今回のケースのように500万円という高額の財産や、誰もその存在を知らなかった不動産や有価証券が新たに発見された場合などには、他の相続人などから全ての遺産の再分割について「遺産分割協議のやり直し」を求められるケースもあります。
 
この場合に、相続人全員の合意が得られれば、最初から遺産分割協議をやり直すことは可能です。
 
しかし、遺産分割協議のやり直しによって、遺産の再分割を行った場合に、各相続人の間で財産の譲渡や贈与が行われたと判断されることがあり、所得税、贈与税、不動産取得税などが新たに課税される可能性があるので注意が必要です。
 

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相続税の修正申告を行う

相続税の申告期限内であれば、新たな財産を含めた訂正した申告書を提出すれば、期限内に提出された正確な申告書として取り扱われることになります。
 
今回の事例のように、相続開始から1年以上が経過している場合には、新たに財産を取得した相続人が増加した相続税を加味した修正申告を行う必要があります。
 
ここで注意が必要となるのは、原則、最初の申告が過少であった場合には過少申告加算税がかかることになりますが、税務調査の事前通知を受ける前までに自主的に修正申告した場合には過少申告加算税がかかりません。
 
しかし、意図的な財産隠しや税務調査等の後で申告漏れの財産が発見された場合には、過少申告加算税や重加算税が課される場合があります。
 

正しい遺産を全て把握するには

最初の遺産分割協議に際し、正しく全ての遺産を網羅的に把握できていれば、再度の遺産分割協議や修正申告の手間を省くことができます。
 
さらに、一部の相続人が意図的に他の相続人に対して財産隠しを行っている場合もあり得ます。主な財産を可能な限り正確に把握するためのポイントは以下のとおりです。
 

(1)現金、預貯金

現金については、故人しか知り得ない「タンス預金」などが存在する可能性があることに注意しましょう。預貯金については、故人の名義で金融機関の口座の存在を一括で照会できる制度はありません。
 
通帳、郵便物、利用明細などで把握できた金融機関ごとに、個別に故人名義での全店舗照会などを求めることは可能です。また最近はネット銀行などで、通帳レス、キャッシュカードレスで全ての取引をパソコンやスマホで行っている場合もありますので、アプリなどの確認も必要不可欠となります。
 

(2)生命保険、株式取引

預貯金と違い、生命保険には生命保険契約者照会制度、上場株式には証券保管振替機構(通称、ほふり)の口座開設の開示請求制度があります。
 

(3)不動産

不動産は、通常、登記事項証明書を取得して確認します。しかし、不動産の所有権移転登記などが過去になされていない場合には、故人の財産であることを把握できない場合もあります。そのような場合は、故人の財産と思われる不動産が所在する市区町村役場から固定資産課税台帳を取得するなどの方法で確認する必要があります。
 
相続人がこのような財産の調査を網羅的に行うことに不安を感じる場合には、弁護士などの専門家に調査を依頼することも一つの方法となるでしょう。財産調査のノウハウを有する専門家にお願いすることで調査漏れのリスクを軽減できるメリットはありますが、別途報酬等が必要となることも考慮しなければなりません。
 

まとめ

国税庁によると、令和5年度の相続税に関する税務調査件数は8556件、うち申告漏れ等の非違件数(過少申告や無申告など)は7200件となっており、84.2%という高い確率で非違が見つかるとのことです。
 
当然ですが、定期預金の口座の存在を仮に隠そうとしても、税務当局に見つけられることは容易に想像できます。余計なペナルティーを避けるためにも適正な申告、納税を心掛けましょう。
 

出典

国税庁 令和5事務年度における相続税の調査等の状況
 
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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