実家の名義人である父が亡くなりました。実家を売るのか貸すのか決めかねているので、決まるまでそのままにしておいてもいいでしょうか?

配信日: 2025.09.23
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実家の名義人である父が亡くなりました。実家を売るのか貸すのか決めかねているので、決まるまでそのままにしておいてもいいでしょうか?
親が亡くなると、感情や家族関係の事情で後回しにされがちな問題のひとつに「実家の名義変更」があります。実家を売る・貸すを決めかねている場合、名義変更を先送りにすると何が起こるのでしょうか。本記事で、トラブル事例とともに解説します。
稲場晃美

お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士

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親が亡くなった実家、どうする? 放置は危険! トラブル事例と令和6年4月からの新常識

親が亡くなり、葬儀や各種の手続きに追われるなかで、実家をどうするかという問題は後回しになりがちです。故人の思い出が詰まった家を、すぐに「売る」「貸す」と割り切れない。きょうだいで話し合っても感情的な問題が絡み、結論が出ない。結局、「取りあえず放置しておこう」とそのままにしてしまう人は少なくありません。
 
しかし、この「取りあえず」が、後々大きなトラブルにつながることをご存じでしょうか。実は、この「取りあえず放置」が、全国で九州本島を超える所有者不明土地問題の一因にもなっているのです。
 

もし今あなたが「実家をそのまま」にしているなら、すでにリスクは始まっているかもしれない!

<お金だけを先に分けた悲劇>
現金や預貯金は、比較的スムーズに分けられることが多いものです。しかし、実家のような不動産は分けにくいため、「後で考えよう」とされ、先に預貯金だけを分けるケースが多々見られます。これが、悲劇の始まりとなる可能性があります。
 
名義が故人のままでは、売却も賃貸もできません。さらに、空き家を維持するには固定資産税や都市計画税がかかり続けます。手入れを怠れば、家は急速に傷み、近隣トラブルや犯罪の温床となるリスクもあります。
 
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」では、全国で900万戸を超え、7戸に1戸が空き家となっており、その多くが放置されています。
 
2023年の法改正により「管理不全空き家」に指定されると、税制優遇が外れ、税金が最大6倍に跳ね上がるリスクも生じます。誰も住んでいないはずの家が、気づかないうちに家族のお金と絆をむしばんでしまうのです。
 

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放置で起こり得る3つの事例

【事例1】「実家を売ろう」と思ったら、相続人が10人以上に

祖父の代から名義変更をしていなかったため、父親の相続時に相続人が大幅に増加しました。父が亡くなった際、預貯金はすぐにきょうだいで分け合いましたが、不動産は「後で」と放置。いざ売却を検討すると、疎遠だった従兄弟・従姉妹たちにも相続権があることが判明し、合意形成に苦労しました。
 
さらに、手続きを進めるなかで相続人の一人が亡くなり、新しい相続人を探して署名・押印をもらい直すことに。「遺産分割協議書は全員の署名とハンコがそろわなければ効力がない」と専門家に言われていたとおり、必要な手続きがどんどん増えていき、売却や賃貸に出せるようになるまでに想像以上の年月を費やしたケースです。
 

【事例2】令和6年4月から相続登記義務化がスタート

法はあなたの事情を待ってくれません。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料の可能性があります。この制度は過去の相続にも適用され、3年の猶予期間が設けられています。対応が難しい場合でも、まずは「相続人申告登記」という簡易的な手続きを済ませておけば、義務は果たしたことになり、罰則を回避できます。
 

【事例3】「特定空き家」に指定され、行政代執行へ

老朽化が進んだ実家が「特定空き家」に指定され、解体の行政指導が入ったケースです。名義変更を放置していたため責任の所在が不明確で、相続人同士がもめ、最終的に行政が強制的に解体。その費用は相続人に請求され、大きな経済的負担となりました。
 

大切な家と、家族の未来を守るために

実家を売るか貸すかは、感情面も関わるため、すぐに結論を出せなくても構いません。ただし、名義変更(相続登記)だけは早めに済ませておく必要があります。
 
まずはきょうだいや親族と話し合い、誰が相続するかを決め、登記を済ませておきましょう。そのうえで、売却・賃貸・リフォームなど活用方法をじっくり検討すればいいのです。
 
特に、都心部に不動産がある場合、高額な相続税がかかるケースも少なくありません。相続税の申告には期限があるため、一人で抱え込まず専門家を頼りましょう。
 
最初の相談相手としては、不動産と税務に強いファイナンシャル・プランナー(FP)も選択肢になります。FPは、ご家族の思いを丁寧にヒアリングし、今後の方向性を一緒に考え、税理士や司法書士等の必要な専門家へとつなぐ、いわば「相続の羅針盤」です。
 
今回のコラムは「亡くなった後」の話ですが、もしご両親がご健在であれば、相続対策は生前に行うのがもっとも効果的です。相続税の節税や円満な遺産分割など、「間に合う人」はぜひこの機会に、ご両親も交えて専門家へ相談してみることをお勧めします。
 

出典

総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果
法務省 相続登記の申請義務化特設ページ
 
執筆者 : 稲場晃美
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士

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