「毎月6万仕送りしてたのに…」母の遺言「財産は兄弟で平等に」にショック! これまで“親孝行”した分は報われないのでしょうか? 仕送りと相続の関係とは
しかし、見返りを求めてはいないものの、相続のことを考えると「自分はほかの兄弟よりも少し多くもらえるのではないか」と期待してしまうことがあるかもしれません。
ところが、遺言書に「財産は兄弟で平等に分ける」と記されていた場合、これまでの仕送りは相続で考慮されないのかと疑問に思うのではないでしょうか。本記事では、仕送りの法的位置づけと、相続との関係について解説していきます。
ファイナンシャルプランナー2級
仕送りは「無償の贈与」とされるのが原則
仕送りは法律上、「贈与」に該当すると考えられます。民法では、贈与契約について次のように定めています。
「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」
つまり、仕送りは「親に無償で財産を与える行為」と解釈されます。親が生活に困窮しているからと子が仕送りする場合も、それはあくまで「贈与」であり、「後で返してもらう」や「相続の際に精算する」と約束をしていなければ、法的には無償提供とみなされるのです。
したがって、仕送りを長年続けてきても、それを理由に相続時に多くの財産を受け取れるわけではありません。
相続は「法定相続分」または「遺言」に従って決まる
相続財産の分け方は、故人の「遺言書」の有無によって変わります。基本的に遺言書があれば、書かれている内容が優先されるため、「財産は兄弟で平等に」と記されていれば、原則として遺言書通りに遺産を分けることになるのです。
一方、遺言書がない場合は、「法定相続分」に従って分けることになります。子どもが複数人いる場合は、子ども同士は平等に分けることが原則です。
そのため、遺言書に特段の記載がない限り、仕送りの有無にかかわらず、兄弟は平等に遺産を分けることになります。
仕送りは「寄与分」として認められるのか?
相続には「寄与分」という制度があり、相続人の中で「特別の貢献」をした人は、相続分を増やせるという仕組みがあります。子どもや配偶者も対象となりますが、条件は厳しく、単なる「親孝行」では不十分なのです。例えば、生前に親の事業を無償で手伝っていたり、借金を肩代わりしたりして財産を守ったケースが「寄与」にあたります。
生活費の仕送りは、親の暮らしを助ける行為であっても財産の維持・増加に直結するとは言えず、裁判例でも寄与分と認められにくいといえるでしょう。したがって、仕送りをしてきただけでは、相続分を増やすことは難しいと考えられるのです。
仕送りを報われる形にするための工夫
「長年仕送りをしてきた分を相続に反映させたい」と考えるのであれば、親が生前に具体的な形として残しておく必要があります。
遺言書に明記してもらう
親に遺言書を作成してもらい、「仕送りをしてくれた子には財産を多めに分ける」と記載しておけば、相続時にその意思が尊重されます。
負担付贈与契約を結ぶ
仕送りを、「親の生活を支える代わりに、将来の相続で考慮する」という形にしたいなら、仕送りをする条件として、相続を増やすという契約書を交わす方法もあります。
家族で事前に話し合う
法的に強制できなくても、家族で合意すれば柔軟に相続分を決めることができます。仕送りの実態を兄弟間で共有し、事前に理解を得ておくことがトラブル防止につながります。
まとめ
親の生活を支えるために毎月仕送りを続けることは、子どもからの「大きな親孝行」といえるでしょう。しかし法律上は、仕送りは「贈与」とみなされ、「無償で財産を与える行為」と判断されます。そのため、原則として仕送りをしていたからといって、その分が相続で自動的に考慮される可能性はかなり低いでしょう。
相続は遺言や法定相続分に従って進められるため、仕送りの分を相続として反映させたいのであれば、生前の遺言作成や契約、または家族間であらかじめ話し合っておくことが大切です。
出典
e-Gov法令検索 民法
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級