母が私名義の口座を持っていて、“葬儀代”として「300万円」を入金していました。先日母から聞いたばかりなのですが、生前贈与として申告しなければいけないでしょうか?
本記事では贈与税や相続税の観点から、考え方と対処法を整理してみます。
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目次
名義預金とは?口座名義と実質の所有者が違うときの考え方
まず押さえておきたいのが「名義預金」という考え方です。名義預金とは、口座の名義は子や孫になっていても、実際にそのお金を出したのは親で、子が自由に使えない状態の預金を指します。
この場合、税務署は「名義人ではなく実際にお金を出した人(母親)の財産」と判断し、相続時に相続財産として計算されることがあります。
今回のように、母が自分の判断で子名義口座に300万円を預けた場合、そのお金を子が自由に使えなければ「名義預金」とみなされ、贈与とは扱われない可能性が高いです。
贈与税の基礎控除と申告義務のルール
一方で、贈与と認められる場合には贈与税の申告が必要です。日本の贈与税は「暦年課税」が基本で、1年間に受けた贈与の合計が 110万円を超えたときに申告・納税義務が生じます。
したがって、母が「あなたに葬儀代として300万円をあげた」という意思を持って、あなたがそのお金を自由に管理・使用できるのであれば、これは贈与にあたり、110万円を超える部分に贈与税がかかります。
ただし、贈与であることを立証するには「贈与契約書を交わしている」「子が通帳・印鑑を管理して自由に使える状態」などの条件が重要です。
申告しないリスク:延滞税や相続税の対象になる可能性
贈与税の申告が必要なのにしなかった場合、税務調査で発覚すると本来の税額に加えて「延滞税」「加算税」が課されることがあります。また、もし母が亡くなったときにこの預金が「名義預金」と判断されれば、相続財産に加算されて相続税の対象になります。
相続税の計算にあたっては、相続開始前3年以内(2024年1月以降は7年以内)に被相続人から相続人への贈与があった場合、その贈与財産は相続財産に持ち戻され、相続税の対象となります。直近の贈与は相続税で課税される可能性が高いので特に注意が必要です。
このケースで申告すべきか?判断のポイント
では「300万円を申告すべきか?」を考えると、次の点が重要になります。
1.贈与の意思があったか
母が「葬儀代として預けただけ」で、自由に使わせるつもりがないなら贈与ではなく名義預金扱いの可能性。
2.実際に管理しているのは誰か
通帳や印鑑を母が持っていれば、形式上は子名義でも実質は母のお金と判断されやすい。
3.過去の贈与の有無
その年に他の贈与を受けていて合計が110万円を超えるかどうか。
4.今後の利用目的
子が生活費や自由な用途に使えるなら贈与。葬儀費用として母の死後に使う前提なら相続財産に近い扱い。
この条件を踏まえると、「葬儀代として母が管理している300万円」は名義預金とみなされる可能性が高く、現時点で贈与税の申告は不要という解釈になるケースが多いです。ただし、将来の相続時には財産として計上されるリスクがあります。
トラブルを防ぐための対処法と注意点
不安を減らすためには、次のような対応をしておくことをおすすめします。
・贈与契約書を作る
母が「子に渡す意思がある」なら、贈与契約書を交わして証拠を残す。
・口座の管理権限を明確にする
通帳やキャッシュカードを子が持ち、自由に使える状態であれば贈与と認められやすい。
・税理士や税務署に相談する
グレーなケースは専門家に確認しておくと安心。将来の相続対策にも役立つ。
・相続財産として計上される可能性を理解する
母が亡くなったとき、この300万円は相続財産とされる可能性が高いことを前提に準備しておく。
まとめ
母が「葬儀代」としてあなた名義の口座に300万円を入金していた場合、それが子に自由に使わせるためのお金なのか、それとも母の財産を一時的に預けているだけなのかで扱いは大きく変わります。前者なら贈与税の申告が必要ですが、後者なら名義預金として相続時に計上される可能性が高いです。
いずれにしても、金額が大きい以上は放置せず、書面や証拠を残したうえで税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。早めに整理しておくことで、相続時のトラブルや余計な税負担を避けることにつながります。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 【贈与税の申告等】
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
