500万円を「5年間」かけて息子に渡しています。年間で「110万円の贈与」を下回っていても、税金がかかるケースはあるのでしょうか?
本記事では、5年間かけて息子に合計500万円を渡した場合を例に、年間110万円の非課税枠の仕組みや注意点、税金がかかる可能性があるケースについて解説します。
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目次
年間110万円以下の贈与なら「申告不要・非課税」は原則
贈与税には、「暦年課税」と呼ばれる制度があります。これは1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も不要というものです。
今回のように「毎年100万円ずつ贈与した」という場合、年110万円の基礎控除内に収まっているので原則として贈与税はかかりません。これは、国税庁が定める正式なルールに基づいたものです。
ただし、110万円以下の贈与であっても注意すべき例外がいくつかあります。単に、「110万円以下だから安心」というわけではないのです。
「定期贈与」と判断されると課税対象になることも
一番の落とし穴は、「定期贈与」として税務署に指摘されるケースです。例えば、贈与を始める時点で「毎年100万円ずつ、5年間で合計500万円を贈与する」といった意図や約束がある場合、それは“初めからまとめて500万円を贈与する意思があった”と見なされる可能性があります。
このようなケースでは、贈与税の非課税枠である110万円を分割して使っているだけと判断され、5年間の贈与額合計500万円が初年度に一括で贈与したと見なされ、贈与税の対象となる可能性があるのです。
特に注意が必要なのは、贈与契約書も作成せず、毎年同じ金額を渡している場合です。このような場合は、実質的に定期贈与と見なされやすくなります。
贈与の意思を証明するには「贈与契約書」が有効
では、どうすれば税務署に「これは連年贈与ではない」と説明できるのでしょうか?
有効な手段の一つが、毎年その都度、贈与契約書を作成することです。贈与契約書に、贈与する金額、日付、贈与者と受贈者の署名・押印を記載することで、毎年個別に判断して贈与している証拠になります。
また、贈与は受贈者の意思によって成立するものです。本人の同意がなく、勝手に贈与が行われた場合は、贈与とは認められない可能性があります。したがって、契約書の作成する際は、贈与者と受贈者双方が合意していることを明確にしておくことが大切です。
相続が発生した場合、過去の贈与が加算されることも
もう一つ注意が必要なのが、相続税との関係です。
現在の税制では、令和6年1月1日以降に相続が開始した場合、相続開始前7年以内に行われた贈与のうち、年間110万円を超える金額は相続財産に加算されて課税対象となります。
したがって、「年間110万円以内だから大丈夫」と思っていても、将来的に相続が発生したときに、過去の贈与が相続税の計算に含まれる可能性があるのです。
また、毎年100万円ずつ贈与している場合でも、相続発生後にその贈与額が将来的に相続税申告の対象となるケースもあるため、日ごろから記録を残しておくことが大切です。
制度を正しく理解して、将来に備えた贈与を実現しよう
毎年110万円以内の贈与であれば、原則として贈与税はかかりませんが、数年にわたって継続的に贈与している場合は注意が必要です。あらかじめ贈与の総額や期間を決めていたり、契約書がなかったりすると、税務署から定期贈与と見なされ、贈与税の課税対象となる可能性があります。
また、相続発生前7年以内の贈与は相続税にも影響します。贈与の意図や時期を明確にするためにも、毎年贈与契約書を作成し、記録を残しておくことが大切です。制度を正しく理解し、計画的に贈与を進めましょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー