教育資金として父から「1000万円」の生前贈与を受ける予定です。課税対象が“3年→7年”に延長されると聞きましたが、どのような対策ができるのでしょうか?
本記事では、生前贈与加算の延長がどういう意味を持つのか、教育資金の一括贈与に使える非課税制度のポイント、1000万円を受け取る際の注意点、そして税負担を抑えるための具体的な対策についてわかりやすく解説します。
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住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
目次
「3年→7年」に延長された生前贈与加算とは?
生前贈与加算とは、贈与した人が亡くなった際に、亡くなる前の一定期間内に行った贈与を相続財産に持ち戻して、相続税の計算に含める仕組みのことです。
これまでは「相続開始前の3年以内の贈与」が対象でしたが、税制改正によって2024年以降段階的に延長され、2031年からは7年以内の贈与が加算対象となります。
つまり、親から1000万円を贈与してもらったとしても、その後数年以内に親が亡くなれば、受け取った1000万円は相続財産に組み込まれ、相続税の課税対象になる可能性があるということです。教育資金目的であっても、「加算制度」の対象となるため注意が必要です。
ただし、扶養義務者がその都度、通常必要と認められる範囲で負担する教育費や生活費は、金額が年間110万円を超えても贈与税はかかりません。この場合は生前贈与加算の対象にもならないため、「一括で受け取るケース」とは区別して考えることが大切です。
教育資金の一括贈与非課税制度はまだ使える?
一方で、教育資金に関しては特別な非課税制度が設けられています。これは、父母や祖父母など直系尊属から30歳未満の子や孫へ教育資金を贈与する場合に、一定額まで贈与税が非課税となる制度です。主な内容は以下の通りです。
・教育資金の非課税限度額:1500万円まで(そのうち塾や習い事など学校以外への支払い分は500万円まで非課税)
・専用の口座を開設し、教育資金非課税申告書の提出が必要
・教育資金として実際に支出した金額のみが対象(領収書提出など必要)
・制度の適用期限は令和8年3月31日まで
つまり、この制度を利用すれば、1000万円を一括贈与しても非課税枠内に収まるため、贈与税の負担を軽減できます。
父から1000万円を贈与された場合に考えられる注意点
教育資金の一括贈与非課税制度にはメリットがありますが、同時に注意すべき点も存在します。
・残額が課税対象となる
たとえば、1000万円を贈与されても、実際に教育費として使ったのが600万円で400万円が契約終了時に残っていた場合、その400万円は贈与税の課税対象となります。
また、契約期間中に父(贈与者)が亡くなった場合、子ども(受贈者)が23歳未満であるなど一定の条件を満たす場合を除き、残額が相続税の課税対象となります。
・制度の要件を満たさない場合の課税される
教育資金以外に流用したり、領収書の提出が不十分だったりすると、非課税が認められず贈与税が課されることがあります。
税負担を抑えるためにできる具体的な対策
こうした注意点を踏まえて安心して活用するためには、次のような対策が有効です。
・必要な金額だけ贈与を受ける
いきなり1000万円を一括で受け取るのではなく、使い残しを抑えるために、分割して専用口座へ資金を振り込むことが効果的です。なお、専用口座に資金を追加できるのは令和8年3月31日までとなっています。
・教育資金としての支出を明確に記録する
授業料や入学金の領収書、塾の月謝明細などをきちんと保管しておくことで、非課税制度を確実に利用できます。
・相続全体を見据えてシミュレーションする
教育資金贈与以外に、預貯金や不動産などの財産がある場合、トータルでどのくらい相続税がかかるかをシミュレーションすることも大切です。必要に応じて生前贈与の方法を工夫したり、将来の相続について計画を立てたりしておくことで、全体の税負担を減らせます。
・早めに専門家に相談する
制度は複雑で改正も多いため、金融機関や税理士など専門家に相談しながら最適な方法を決めるのが安心です。
まとめ:教育資金贈与は制度理解と計画性が重要
教育資金として1000万円を贈与してもらう場合、生前贈与加算の延長により、相続税の対象になる可能性が広がっています。
ただし、扶養義務者が都度負担する教育費や生活費は非課税であり、加算の対象にもなりません。また、一括贈与の非課税制度を利用すれば贈与税の心配は軽減できますが、使い残しは贈与税または相続税の対象となる点に注意が必要です。
不要な課税を避けるためには、必要な分だけを受け取り、教育資金としての支出を明確に記録し、相続全体を見据えて計画を立てることが大切です。制度は複雑で改正も多いため、早めに専門家に相談して最適な方法を選ぶことで、安心して教育資金を活用できるでしょう。
出典
国税庁 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
文部科学省 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置に関するQ&A
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修 : 高橋庸夫
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