父の死後「家賃6万円×8部屋のアパート」「現金3000万円」を兄弟で相続! 兄が「俺はアパートがいい」と言うけれど、現金は“家賃収入”に比べて損でしょうか?
本記事では主な遺産の相続方法のほか、不動産と現金はどちらを相続したほうが得なのかを解説します。
2級ファイナンシャルプランニング技能士
遺産の相続方法
遺産の相続方法には、主に「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」があります。
現物分割
現物分割とは、遺産が不動産と現金の場合に、兄は不動産、弟は現金のように遺産をそのままの形で分割して相続します。4つの相続方法の中では最も多く使われています。土地しかないときは、土地を分筆する場合もありますが、現実的には分筆が難しいことも少なくありません。
代償分割
代償分割とは、遺産を1人で相続して、相続していない相続人には代償金を支払う方法です。遺産をできるだけ分割せずに相続させたいときや、分割が難しい場合などに用いられます。不動産が4000万円、現金が3000万円などで均等に分割できないときに、不動産を相続した人が現金を相続した人に500万円支払って均等にすることも代償分割です。
換価分割
換価分割は、不動産など分割しにくい遺産を売却して現金にし、分割しやすい方法で相続する方法です。不動産に相続人が住んでいる場合は、そこから出て行く必要がある点がデメリットです。また、事前の想定よりも売却額が安くなることもあるでしょう。
共有分割
共有分割は、相続人が遺産を共有します。共有者全員の合意がなければ売却できないほか、リフォームを行う場合でも共有者の半分以上の合意が必要になるなど、デメリットが多く感じられるかもしれません。
不動産と現金、どちらを相続したほうが得?
不動産と現金であれば、どちらを相続したほうが得なのでしょうか。不動産を相続するメリット・デメリットを紹介します。
不動産を相続するメリット
相続税の課税価格は、相続税評価額によって計算されます。現金の場合は、金額がそのまま相続税評価額になりますが、不動産は異なります。不動産は購入価格よりも低い評価額になるからです。土地なら購入価格の8割、建物なら5~6割程度です。賃貸物件として使っている場合などでは、さらに評価額が下がります。
相続税は累進課税が採用されており、課税価格が下がると税率も下がるため、課税価格を押し下げるメリットは大きいでしょう。さらに、今回の事例のような賃貸物件であれば、相続後に賃料収入が得られる点もメリットです。
現金よりも不動産を相続するほうが良い?
不動産を相続するメリットを考えると、現金よりも不動産を相続したほうが得だと感じる人もいるでしょう。しかし、不動産を相続することにはデメリットもあります。
不動産は、建物や土地を管理しなければなりません。今回の事例のような賃貸物件だと、定期的な修繕なども必要です。家賃を支払わない入居者など、さまざまなトラブルにも対応する必要があります。
また、物件に必ず入居者がいる保証もありません。賃貸物件は年々建物が劣化していくため、家賃を現状のまま維持できないこともあります。入居者が少なければ、固定資産税などの固定費や管理費で赤字になることもあるでしょう。
以上のことを考えると、不動産を管理するのはそれなりの手間や知識が必要です。一方、現金を相続すると、相続税は高くなるかもしれませんが、不動産のような手間はかかりません。不動産、現金を相続したときのメリット・デメリットをよく考えて、選択する必要があるでしょう。
まとめ
遺産を分割する際は、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割が主な方法です。このうち、現物分割がよく行われますが、均等に分割できないときは代償分割なども用いられます。
現金と不動産を比較すると、相続時に評価額が下げられるほか、相続後に家賃収入もある不動産のほうが良いのではないかと思う人が多いかもしれません。しかし、管理などの手間がかかりますし、空室リスクも存在します。メリット・デメリットをよく考えた上で、相続人同士がよく話し合って決めたほうがよいでしょう。
執筆者 : 山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士