父から生前贈与で「200万円」を現金でもらいました。現金で手元にあれば「贈与税」はかかりませんか? 税務署にバレるでしょうか…?
本記事では、現金による贈与でも贈与税がかかる理由や、税務署が贈与を把握する仕組み、そして贈与税の基礎控除の正しい活用法を解説します。
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目次
現金でも贈与税はかかる?「贈与」と見なされる条件
結論から言うと、現金で受け取ったとしても贈与税はかかります。贈与税は、個人から財産を無償で受け取った場合に課税される税金で、現金だけでなく、預金や不動産、有価証券なども対象です。
「現金で手元にあればバレない」と考えている方もいるようですが、それは大きな間違いです。贈与は、財産をあげる人(贈与者)と、もらう人(受贈者)双方の合意があれば成立します。現金で直接手渡しされた場合でも「贈与を受けた」という事実に変わりはなく、贈与税の申告義務が発生するのです。
贈与税は、贈与を受けた側が、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に申告と納税をする必要があります。この申告義務を怠ると、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されるため、注意が必要です。
税務署は「現金の贈与」をどうやって把握する?
「現金でのやり取りなら、税務署にはバレないのでは」と考える方もいるかもしれません。しかし税務署は、贈与の事実を把握するために、KSKシステム(国税総合管理システム)のように情報収集する手段をいくつも持っています。
預金の動きから把握
贈与された現金をいつまでも手元においておくことは、防災・防犯の面から危険なため、できれば避けたいものです。やがて銀行口座に預け入れた場合、その不自然な入金履歴は税務署に把握されるきっかけになります。
特に、普段の収入や生活水準に比して高額な入金があった場合、税務署は贈与を疑い、調査のきっかけとなるでしょう。
贈与者の財産状況から把握
高額のやりとりが行われると、税務署が贈与税の申告漏れを疑うきっかけになります。もし亡くなった人の預金残高が急激に減っていたり、生前保有していた不動産などの財産がなくなっていたりすると、生前贈与が疑われるでしょう。
その調査の過程で、贈与を受けた子どもの口座履歴なども併せて確認されている可能性があります。
生活状況の変化から把握
贈与を受けたお金で高額な買い物や不動産の購入、住宅ローンの繰り上げ返済などをした場合、その資金の出所が調査されることがあります。
このように、税務署は贈与者と受贈者の財産や預金の動きを多角的に把握しており、現金でのやり取りであっても確認がなされる可能性は非常に高いため、「現金ならバレない」とは考えるべきではないでしょう。
年間110万円の「基礎控除」を正しく活用する方法
贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。これは、贈与を受けた人が1月1日から12月31日までの1年間で受けた贈与の合計額が110万円以下であれば「贈与税はかからない」という制度です。
今回のケースでは、200万円の贈与から基礎控除額を差し引いた90万円に対して贈与税がかかります。200万円以下の贈与税は税率10%が課されるため、90万円の10%である「9万円」が贈与税額です。
この基礎控除を活用することで、贈与税対策につながります。
活用方法の注意点
200万円を一度に贈与するのではなく、1年間の贈与額を基礎控除額の110万円以内にし、複数年に分けて贈与することで贈与税を支払う必要はなくなります。しかし、基礎控除を活用するには注意点もあります。
例えば「2年間にわたって毎年100万円を贈与する」と最初から決めている場合は、総額の200万円についての「定期贈与」とみなされ、200万円に対して贈与税が課税されます。
そのため、手間はかかりますが、贈与者と受贈者で贈与契約書を作成しておくのがおすすめです。毎年基礎控除の範囲内の贈与をするたびに契約書を作成するなど、定期贈与ではなく各年の贈与である事実を明確にしておくことで、定期贈与の疑いを避けられます。
現金贈与も申告が必要! 基礎控除を正しく使おう
父から200万円の現金をもらって手元に置いておいた場合でも、贈与税の申告義務が発生します。現金でのやり取りであっても、税務署はさまざまな方法で贈与の事実を把握することができるため、「バレない」と考えることはやめましょう。
贈与を受けた場合、年間110万円の基礎控除額を超える部分に対して贈与税がかかります。今回のケースでは、200万円から110万円を引いた90万円が課税対象です。なお、贈与税対策として基礎控除を活用する場合は、贈与契約書を作成するなど、計画的に実行するのがよいでしょう。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 第4節 契約書の取扱い
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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