夏に帰省をし、両親から「教育費で120万円使って」と、現金でもらいました。振り込みにすれば“タンス預金”で疑われないでしょうか?
本記事では、教育資金の贈与に関する税制の仕組みと、現金受け取りのリスク、振り込みによる管理のメリットを解説します。
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
教育資金の贈与と税金:110万円を超えたらどうなる?
まず、押さえておきたいのは、贈与税の基礎控除です。贈与税は原則として、毎年1月1日~12月31日の間に、贈与された金銭や財産の合計が110万円以内であれば、非課税となります。
今回のケースでは、「120万円」を両親から一括でもらっているため、基礎控除を超えた10万円分が課税対象となります。ただし、110万円の基礎控除の枠組みとは別に、扶養義務者から贈与される教育費に関しては、都度必要となるタイミングで通常必要な範囲であれば、金額に関係なく非課税です。
そのため、「教育費に使って」と、教育費の支出でないタイミングで臨時にもらうような形ですと、形式上贈与税が発生し、申告と納税が必要になる可能性が高いでしょう。
「タンス預金」扱いと疑われる可能性
両親から現金で受け取った場合、そのお金は確かにいわゆるタンス預金扱いされるかもしれません。タンス預金とは、金融機関に預けることなく、タンスなど家の中に保管してあるようなお金をいいます。
タンス預金自体は悪いものではありませんが、お金は社会通念上、銀行などに預金しておくことが一般的です。
そのため、相続が生じたり、事業を行っていたりするなど、税務署が必要と判断した際には税務調査が入り、そのタンス預金について、お金の出どころに不正な点はないか、具体的には税の申告と納税が適切に行われているかなど、調査される可能性があります。
とはいえ、タンス預金を疑われたとしても、適切に申告と納税が行われていれば、基本的に問題はありませんので、その点はご安心ください。
ただし、タンス預金のお金については、その流れを客観的に納得のいく形で証明することは容易ではありません。また、防犯面から見てもあまり望ましい状態とはいえないでしょう。
そのため、タンス預金については、あらぬ疑いがかかる場合のデメリットがどうかという点を差し置いても、おすすめはできない方法です。
タンス預金と疑われたくないなら銀行振り込みにすべき
では、タンス預金を含め、お金の流れに不正な点があると疑われないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。
今回は両親から120万円をもらったという事例ですので、贈与税の基礎控除を超える10万円について、適切に申告と納税を行うことを前提に話をします。
理想的な方法は、贈与契約書を作り、そのうえで銀行振り込みの形で受け取ることです。そうすることで、その120万円のお金が、両親から教育費として贈与を受けたということを証明できるからです。
また可能であれば、学校入学前など、その120万円全額を必要なタイミングで受け取ったりすることが理想です。そうすれば、110万円の基礎控除とは関係なく、教育費に関するものとして非課税で受け取ることができます。
まとめ
両親からの教育資金支援はありがたいものですが、現金での受け渡しは証拠が残らず、タンス預金として扱われたり、税務上の疑念を持たれたりする可能性があります。
不安を減らすためには、本来は贈与契約書を作り、銀行振り込みなど記録が残る方法で受け取るべきですが、すでにお金を受け取った場合でも、契約書は最低限作っておくべきでしょう。
税に関する問題は非常に重要で、知らなかったでは済まないことも多くあります。甘く考えず、しっかりと対応をすべきでしょう。
執筆者 : 柘植輝
行政書士