両親の死後、銀行預金「1000万円」の存在が判明! 同居の長男は「自分が面倒を見てたから」と独り占め宣言…ほかの兄弟に“対抗手段”はありますか?

配信日: 2025.10.08
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両親の死後、銀行預金「1000万円」の存在が判明! 同居の長男は「自分が面倒を見てたから」と独り占め宣言…ほかの兄弟に“対抗手段”はありますか?
親が亡くなった後の財産分与は、相続人でしっかり話し合っておかないと、あとからトラブルになることもあります。財産が大きい金額になればなるほど、親族間のもめごとに発展しかねない問題です。
 
本記事では、亡くなった両親に誰も知らなかった銀行預金1000万円があった場合、相続人である子どもたちの財産分与がどうなるのか解説します。さらに、長男など相続人の1人が遺産を独り占めしようとした場合の対処や、相続人の最低限の権利なども紹介しますので、参考にしてください。
松尾知真

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亡くなった親の銀行預金はどのように分配されるのか

銀行預金に限らず、相続財産についての遺言書がある場合は、遺言書に従って分配するのが原則です。しかし、遺言書がないときなどは、相続人全員で遺産分割協議をし、どのように分配するのか決める必要があります。
 
その際、分割割合の目安となるのが、法定相続分です。法定相続分は民法で定められており、亡くなった人との続柄によって相続割合が決まります。例えば、今回のように複数の子どもだけが相続人なら、その子どもで均等に分けるよう定められています。
 
もし、相続人が子ども4人だった場合、それぞれの法定相続分は4分の1です。遺産が銀行預金1000万円のみなら、金額に直した法定相続分は1人で250万円です。ただ、法定相続分に拘束力はなく、遺産分割の話し合いがつかないときなどに適用される目安に過ぎません。
 
先に「遺言書が原則」と記しましたが、相続人の間で合意があれば、結果的に遺言書と違う形で分割できます。つまり、遺産分割は、故人の遺志である遺言書や、法定相続分という法的な目安がありながらも、最終的には相続人間の合意があればそちらが優先されるのです。
 

長男に「独り占め」されるのに抵抗があるときは

それでは、もし長男など相続人の1人が「独り占め」を主張した場合、どうなるのでしょうか。確かに法定相続分があるものの、それは目安であり拘束力はありません。
 
しかし、長男がすべて相続するのであれば、そのことをほかの相続人が承諾しなければなりません。逆の言い方をすれば、相続人全員が合意しない限り、生前に親の面倒を見ていても、長男が財産を独占することはできません。ほかの相続人は、独り占めされるのが嫌であれば、それに同意せず、遺産分割協議書などに署名・捺印しなければいいのです。
 
また、今回のように遺産が銀行預金などの場合は、金融機関は口座名義人が亡くなったことを把握した時点で、口座を凍結します。そのため、葬儀に必要な費用など一定の金額を除き、誰であっても口座凍結後に預金を引き出すことはできません。
 
遺言書などがない場合、凍結解除の手続きには、戸籍などの必要書類に加え、相続人全員の捺印や印鑑証明書も必要です。事実上、ほかの相続人の承諾なしに、特定の相続人が預金を「独り占め」できないのです。
 

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相続人には「遺留分」もある

法律や金融機関の手続きに照らせば、親の面倒を見ていた長男であっても、勝手に預金を独り占めできません。ただ、実際に遺言書があり「長男がすべて取得する」と書かれていると、財産の取得を諦める相続人も多くいます。しかし、そのような際は「遺留分」を主張することが可能なのです。
 
遺留分とは、目安である法定相続分と違い、故人に近い一定の相続人に保障された最低限の取り分で、こちらも民法に規定されています。図表1のとおり、対象となる相続人は、配偶者や子ども、さらには親や祖父母といった直系尊属までです。
 
図表1

図表1

筆者作成
 
例えば、相続人が子ども4人だけの場合、法定相続分4分の1に対し、その2分の1が遺留分となります。つまり、今回のケースでは「1000万円×法定相続分4分の1×2分の1=125万円」が遺留分です。
 
もし、遺留分を侵害された場合は、侵害した相続人に対し「遺留分侵害額請求」で相当額の支払いを求められます。請求に関する話し合いがつかない場合も、単独の相続人で家庭裁判所の調停手続きを利用可能です。
 
このように、故人の意思である遺言にも、相続人の生活を保障するための制約があります。遺言などで指定された分割に納得できない場合は、このような権利があることも踏まえ、弁護士などの専門家に相談してみるのがいいでしょう。
 

まとめ

相続による遺産分割は、相続人全員での話し合いが最優先であり、親の面倒を見ていた長男であっても、勝手に遺産を独占することはできません。また、相続人には財産分与の目安となる「法定相続分」に加え、最低限の保障である「遺留分」もあります。
 
ただ、親族間にも個別の事情があり、法律上の権利を無理に主張するのがいいとは限りません。親が亡くなった後の親族間で、訴訟や調停といったトラブルは避けたいものではないでしょうか。まずは、自分の権利を把握し、ほかの相続人の意向も聴いた上で、冷静に話し合ってみてはいかがでしょうか。
 

出典

国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
e-Gov法令検索 民法
裁判所 遺留分侵害額の請求調停
 
執筆者 : 松尾知真
FP2級

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