70歳の父に「同居したら毎月10万円あげる」と提案されています……介護費に使えば「税金」はかからず全額受け取れますか?
本記事では、介護費用の支払いなどを踏まえながら、贈与税について解説します。
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贈与税が発生しないケース
財産を無償で譲渡することを贈与といい、個人間の贈与では贈与額やお金の使い道次第で贈与税が発生します。
贈与税は1月1日~12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額を基に算出され、親子や夫婦といった親族間での贈与も課税対象です。
ただし、すべての贈与が課税対象になるわけではありません。ここからは、贈与税が発生しないケースを紹介します。
年間の贈与額が110万円以下
贈与税は年間の贈与額の合計を基に算出されますが、110万円の基礎控除が適用されます。つまり、年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税は発生しません。110万円を超えた部分に対して課税されるのです。
注意すべきは、年間の贈与額の合計に対して110万円の基礎控除が適用される点です。それぞれの贈与に基礎控除が適用されるわけではありません。
例えば、AさんとBさんから同じ年にそれぞれ90万円の贈与を受けるとします。それぞれの贈与に基礎控除が適用されて贈与税が非課税になるのではなく、合計額の180万円から110万円を控除するため、残りの70万円に対して贈与税が発生するのです。
生活費・教育費の贈与
扶養関係が成立する個人間において、生活費や教育費の贈与には贈与税がかかりません。この場合の生活費とは通常の日常生活に必要な費用のことで、治療費や子育てに関わる費用も含みます。教育費とは学費や文具費、教材費などです。
ただし、仮に生活費や教育費の名目で贈与をしたとしても、そのお金を趣味や預金といったほかの目的で使用した場合は贈与税が発生します。
子どもへの結婚や子育て資金の贈与
祖父母や両親が子どもへ結婚や子育てのための資金を贈与する場合、1000万円までは非課税となります。このうち、結婚に必要な資金の贈与が非課税になるのは300万円までです。
受贈者が18歳以上50歳未満の場合に適用されますが、制度を利用するには専用口座を開設し、申告書を提出する必要があります。
親から年間120万円の贈与を受けて介護をする場合
介護が必要な親から介護費用として年間で120万円の贈与を受ける場合、110万円の基礎控除を適用した10万円に贈与税がかかる可能性があります。
発生した介護費用は親が支払い、介護費用を差し引いた分を子どもに贈与すると良いでしょう。年間の贈与額を基礎控除額の110万円以内に抑えられれば、贈与税がかからずにお金を子どもに渡せます。
なお、公益財団法人生命保険文化センターによると、月々の介護費用の平均は9万円とされています。年間の介護費用が108万円であれば、贈与予定の120万円から介護費用を差し引いた残金は12万円です。
介護費用の支払い後に12万円のみを贈与すれば基礎控除の110万円に収まるため、贈与税はかかりません。
子どもが親の介護費用を支払うこともあるでしょう。基本的に、介護費用は生活費という扱いを受けます。親子は扶養関係にあるため、子どもが親の生活費である介護費用を負担しても贈与税は発生しません。
介護費用は親が支払うのがおすすめ
親から介護費用として年間120万円を贈与される場合、基礎控除の110万円を差し引いた10万円に贈与税が発生する可能性があります。
介護費用を親が支払い、120万円から介護費用を差し引いた余剰分を子どもに贈与することをおすすめします。年間の贈与額が基礎控除額の110万円以下になれば贈与税を支払う必要はありません。月々の介護費用は状況次第ですが、平均額は9万円とされています。
なお、子どもが親の介護費用を負担しなければならないことがあるかもしれません。基本的に、要介護者の介護費用は生活費として扱われます。扶養関係にある親子間において、子どもが親の生活費である介護費用を負担しても贈与税は発生しません。
出典
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし(令和7年6月)
公益財団法人 生命保険文化センター 介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー