「終活」の一環でタンス預金「300万円」を子どもに渡しました。口座を経由しなかったので、税金の申告は必要ないですよね?

配信日: 2025.10.11
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「終活」の一環でタンス預金「300万円」を子どもに渡しました。口座を経由しなかったので、税金の申告は必要ないですよね?
「終活」を意識して、自宅にあった現金300万円を子どもに手渡した場合、「口座を通さなかったから税金や申告は必要ないのでは」と考える方もいるかもしれません。
 
たしかに、銀行振込のような記録が残らないと「バレにくい」と思いがちですが、税法上は手渡しだからといって税金や申告義務がなくなるわけではありません。今回は、贈与税と相続税、実務上のリスクなどを分かりやすく解説します。
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贈与税の基本ルール:1年間110万円まで非課税だが、それを超えると申告義務が生じる

まず押さえておきたいのは、個人から財産を無償で譲り受けた場合、それは「贈与」に該当し、贈与税の対象となるという点です。国税庁の説明によれば、年間(1月1日~12月31日)の贈与の合計額が110万円を超えると、贈与税の申告・納税が必要になります。
 
したがって、30万円なら非課税で申告不要ですが、今回のケースのように300万円を受け取った場合は、受け取った人に贈与税の申告・納税義務が発生します。
 
なお、贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の方式があります。前者は通常の方式であり、後者は親子間など特定要件を満たす場合に選択でき、贈与時の税負担を抑えつつ、後で相続時に精算する仕組みです。
 
今回の300万円という贈与が暦年課税方式であるか相続時精算課税方式であるかによって処理が変わります。
 

手渡し(タンス預金方式)だから“バレない”わけではない:記録・証拠・税務調査の視点から

手渡しで現金を渡したからといって、税務署に見逃されるという保証はありません。むしろ、まとまった金額の現金移動は、口座引き出し履歴や資金の出どころを通じて後で“説明を求められる”可能性があります。
 
例えばどこかで銀行から300万円を引き出して現金化する必要があるため、その引き出し記録は銀行側・金融機関側に残ります。それを税務署が精査すれば、預貯金の流れと整合性を問われる可能性があります。
 
そのため、「口座を通さなかったから大丈夫」という前提は非常に危ういといえます。
 

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300万円を贈与したら、どんな税金・申告義務が生じるか

300万円を子どもに贈与した場合、基本的には年間の贈与額が110万円を超えているため、贈与を受けた子どもが翌年に贈与税の申告をする必要があります。
 
暦年課税の場合、贈与税は基礎控除額110万円を差し引いた額を課税対象とし、贈与者との関係や受贈者の年齢などによって異なる税率が適用されます。申告期限は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までと定められています。
 
また、相続発生時には、過去に行った贈与が相続財産とみなされる可能性もあります。さらに、「口座を経由していない現金渡し」の場合、贈与の事実や経緯が明確でないと、実際には贈与と認められず名義預金などと判断されて相続税の課税対象となる恐れがあります。
 
以上から、300万円の贈与は贈与税の申告義務が発生するだけでなく、将来の相続税課税にも影響する可能性があるという点を理解しておくべきです。
 

実務対策・注意点:現金贈与を安全・適正に行うために

では、終活・生前贈与として現金300万円を子どもに渡したい場合、どのようにすれば税務リスクを最小化できるでしょうか。
 
まず、贈与契約書を書面で残すことが非常に重要です。「いつ、誰から、誰に、いくら贈与したか」などを明確にしておけば、後日税務署から説明を求められた際の根拠になります。銀行振込で記録を残す、あるいは贈与契約書を作ることが有力な対策となります。
 
次に、毎年110万円以下ずつ分割して贈与していく「暦年贈与方式」を採るのが定番の方法です。例えば、10年間で1100万円まで贈与しても、その年ごとに110万円以内に収めれば贈与税を回避できます。ただし、「定期贈与」とみなされないように注意が必要です。
 
また、前述の「相続時精算課税制度」を選択する方法もあります。この制度を使えば、年間110万円の基礎控除のほか、特別控除として2500万円まで贈与してもその時点では贈与税がかからず、相続時に精算するという仕組みです。
 
ただし、適用要件があり、一度選択したらその贈与者に対しては「暦年課税」には変更できないため慎重に判断する必要があります。
 
さらに、贈与した資金をすぐに子どもが使うケース(教育費・住宅取得費など)は、特例で非課税となる制度が適用されることがあります。いずれにせよ、大きな金額を一度に渡す前には、税理士など専門家に相談して最適な贈与方式を選ぶことをおすすめします。
 

まとめ:口座を通さなかったからと油断してはいけない

終活の目的でタンス預金300万円を子どもに渡した場合、「口座を経由しなかったから税金・申告は不要」と考えるのは危険です。税法上、贈与税の基礎控除を超えれば申告・納税義務が生じます。
 
手渡しという方法が申告の回避や不正の保護になるわけではなく、税務署は銀行の引き出し記録や預金流動性などを通じて実態を調べることが可能といわれています。
 
さらに、将来的な相続課税で「名義預金」としてみなされるリスクもあります。適切な方法で贈与契約書を残したり、分割贈与や相続時精算課税制度を活用したりすることで、無用なトラブルを避けられます。
 
大切な財産を家族に引き継ぐ最後の準備こそ、税務的にも慎重かつ正しく進めたいものです。このようなケースでは、必要に応じて専門家と相談しながら計画的に進めていくことが安心につながるでしょう。
 

出典

国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和7年度版) 財産をもらったとき
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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