1000万円ほど住宅ローンが残っている状態で父が亡くなりました。相続しても住宅ローンの返済は免除されるとのことなのですが、相続税はかかるのでしょうか?
本記事では、このようなケースにおいて相続税がかかるのかを解説します。
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
相続税に関するポイント
団信の保険金でローンが完済され、その不動産(お父さまが住まわれていた自宅)が相続の対象となった場合の相続税のポイントを以下にまとめました。
1. 相続税の対象から住宅ローンは差し引かれない
住宅ローンが1000万円ほど残っていたとしても、団信の保険金によって住宅ローンが完済されれば、相続人はローンの返済義務を負いません。そのため、住宅ローンの残債1000万円は相続税計算上のマイナスの財産(債務)として差し引くことはできません。
2. 相続財産には、ローン完済後の不動産が含まれる
団信でローンが完済された後の不動産は、お父さまから相続される財産として相続税の課税対象となります。
3. 相続税の対象となる財産
相続税は、全てのプラスの財産(不動産、預貯金、株式など)の合計額から、借金などのマイナスの財産(団信で完済されないもの)や葬式費用などを差し引いた後の金額が、基礎控除額を超えた場合にかかります。
以下で詳しく解説します。
相続税はかかるのか?
被相続人から相続などによって、「財産を取得した人それぞれの課税価格の合計額」が「遺産に係る基礎控除額」を超える場合、その財産を取得した人は相続税の申告をする必要があります。
なお、遺産に係る基礎控除額は、次の算式で計算します。
「遺産に係る基礎控除額」=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
また、この財産を取得した人それぞれの課税価格の合計額とは、次に解説する「相続税が課される財産」(プラスの財産)の価額の合計額から「相続財産の価額から控除できる債務」(マイナスの財産)および葬式費用の金額の合計額を差し引いた金額です。
1. 相続税が課される財産(プラスの財産)
(1)お父さまが亡くなった時点で所有していた財産
<1>土地、<2>建物、<3>株式や公社債などの有価証券、<4>預貯金、<5>現金などのほか、金銭に見積もることができる全ての財産が相続税の課税対象となります。
なお、日本国内だけでなく、国外に所有している財産も対象となります。
(2)みなし相続財産
お父さまが亡くなったことで支払われる「生命保険金」や「退職金」などは、相続などによって取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。
なお、「生命保険金」や「退職金」のうち、次式で算出された金額までは非課税となります。
非課税対象額=500万円×法定相続人の数×(その相続人の取得した合計額/相続人全員の取得した合計額)
(3)お父さまから取得した相続時精算課税適用財産
お父さまから生前に贈与を受け、贈与税の申告の際に相続時精算課税を適用していた場合、その財産は相続税の課税対象となります。なお、相続税の課税価格に加算するのは、相続開始時の価額ではなく、贈与時の価額とします。
(4)お父さまから相続開始前7年以内に取得した暦年課税適用財産
お父さまが亡くなる前7年以内(2024年以降の贈与が対象)にお父さまから贈与を受けた財産は、相続税の課税対象となります。この場合は(3)と同様に、贈与時の価額を基準として相続税の課税価額に加算されます。
2. 相続財産の価額から控除できる債務(マイナスの財産)
借入金や未払い金などが対象となります。また、お父さまが納めなければならなかった税金で、まだ納めていなかったものも含まれます。
3. 葬式費用
<1>お寺などへの支払い、<2>葬儀社などへの支払い、<3>お通夜に要した費用などが該当します。ただし、墓地や墓碑などの購入費用、香典返しの費用や法要に要した費用などは、葬式費用に含むことができません。
まとめ
今回のケースで、「住宅ローンの返済が免除される」という状況であれば、ローンの残債1000万円はプラスの財産から差し引かれませんが、ローンがなくなった後の不動産は相続財産に含まれます。
最終的に相続税がかかるかどうかは、不動産を含めた全遺産の合計額(プラスの財産からマイナスの財産と葬儀費用を差し引いた額)が法定相続人の数に応じた基礎控除額を超過するかによって判断されます。
正確な判断と手続きのためには、税理士や弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。
出典
国税庁 相続税のあらまし
執筆者 : 堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー