父が「節税のためだ」と、私を受取人にして1000万円の生命保険に入りました。生命保険を介すことで、受け取るときに相続税はかからなくなるのでしょうか?

配信日: 2025.10.30
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父が「節税のためだ」と、私を受取人にして1000万円の生命保険に入りました。生命保険を介すことで、受け取るときに相続税はかからなくなるのでしょうか?
相続対策の一つとして、「生命保険を活用すると節税になる」と聞いたことはありませんか? 父親が契約者・被保険者となり、子どもを受取人にして保険に加入するケースでは、保険金を受け取れる際の税金の扱いがどうなるのか疑問に思う人も多いでしょう。
 
しかし、生命保険金は契約の形によって課税される税金の種類が異なります。本記事では、令和7年10月時点の最新の制度をもとに、保険金にどのような税金がかかるのか、その判断基準を整理します。
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高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

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生命保険金の税金は、誰が保険料を払ったかで決まる

生命保険金に課される税金は、主に相続税・所得税・贈与税の3種類です。どれが適用されるかは、「契約者」「被保険者」「受取人」の関係性によって決まります。
 
例えば、父が契約者かつ被保険者で子が受取人の場合、保険料を負担したのは父なので、その死亡保険金は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の対象になります。
 
一方で、子が契約者兼保険料の負担者となり、父を被保険者として契約した場合には、子が自らの資金で保険料を支払っていることになります。この場合、父の死亡によって子が受け取る保険金は、所得税(一時所得)の対象となります。
 
また、父が契約者・保険料負担者で孫など第三者を受取人にした場合には、贈与税の対象となるケースがあります。
 
このように、誰が保険料を支払ったかによって課税される税の種類が変わるため、契約時に関係を明確にしておくことが重要です。
 

相続税はかかるが「非課税枠」で軽減できる

父が契約者かつ被保険者で子が受取人というケースでは、生命保険金は相続税の課税対象となります。ただし、相続税法には「500万円×法定相続人の数」の保険金が非課税となる特例があり、これを生命保険金の非課税枠と呼びます。
 
例えば、法定相続人が配偶者と子の2人の場合、「500万円×2人=1000万円」までが非課税です。そのため、子が1000万円の保険金を受け取った場合、その全額が非課税となる可能性があります。
 
なお、養子を含む場合には、実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までしか法定相続人の人数としてカウントできません。これを超える養子は、非課税枠の計算に含められない点に注意が必要です。
 
一方、生命保険金の非課税枠とは別に、遺産全体に適用される「相続税の基礎控除」もあります。基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、これを超える遺産額がある場合には、相続税が課されます。
 
つまり、生命保険金だけで非課税になる場合でも、不動産・預貯金などの他の財産を合計した結果、全体の遺産が基礎控除を超えれば相続税が発生するという点を理解しておくことが大切です。
 

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受取人を孫や第三者にすると課税リスクが高まる

受取人を相続人以外の孫や第三者にした場合は、その受取人本人にとって課税負担が増える可能性があります。これは、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が相続人にしか適用されないためです。その結果、孫や第三者が受け取る保険金には、全額または一部に相続税が課されることがあります。
 
さらに、孫が代襲相続人(亡くなった子の代わりに相続する立場)でない場合は、「相続税の2割加算」の対象となり、他の相続人より税負担が重くなります。
 
また、父が保険料を負担して孫や第三者が受け取る場合は、相続税の対象にならないと判断された場合でも贈与税が課される可能性もあります。このように、相続人以外を受取人に指定すると、非課税枠が使えなくなるうえ、契約内容によっては想定以上の税負担となることもあるのです。
 
節税目的で受取人を変更する場合は、誰が保険料を負担しているかを明確にし、契約関係の整合性を確認しておくことが大切です。
 

節税目的の生命保険は、契約構造の確認がカギ

生命保険を利用した節税は有効ですが、形式的に受取人を変えただけでは節税効果が得られない場合があります。税務署は実際の保険料負担者を重視して課税を判断するため、名義と実態が一致していないと贈与税の指摘を受ける可能性があります。
 
また、非課税枠を超える保険金や複数の契約を組み合わせた場合は、受け取る相続人それぞれの課税額や遺産全体の相続税計算に影響することがあります。
 
生命保険金は契約単位で非課税枠が適用されるわけではなく、すべての契約を合算して判断されるため、1人の相続人が多額の保険金を受け取ると、他の相続人を含めた全体の相続税負担にも影響が及びます。
 
節税目的で生命保険を設計する場合は、契約前に税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
 

契約関係を整理して正しく節税しよう

生命保険を活用することで相続時の税負担を軽減できる可能性がありますが、「保険金なら税金がかからない」というのは誤解です。
 
税務上は契約者・被保険者・受取人の関係性により、相続税・所得税・贈与税のいずれかが適用されます。また、相続税の非課税枠は、被相続人が契約者かつ保険料を負担し、相続人が保険金を受け取った場合にのみ適用されます。
 
節税目的で生命保険を利用する場合は、契約者・被保険者・受取人の関係性や保険料負担者を明確にし、税理士などの専門家に相談しながら慎重に設計することが大切です。正しく理解して活用すれば、生命保険は有効な相続税対策といえるでしょう。
 

出典

国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
国税庁 No.4152 相続税の計算
国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
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