一人息子ですが、金銭トラブルで関係が悪化…。死後、自宅以外の資産を相続させない方法はありますか?

配信日: 2025.10.31
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一人息子ですが、金銭トラブルで関係が悪化…。死後、自宅以外の資産を相続させない方法はありますか?
長年にわたる息子さんとの金銭トラブルに悩み、もう数十年、息子さんとの関係があまり良くないというAさん。
 
自分が高齢になり相続について考えた時に、自宅以外の資産、主に貯金を相続させたくないと思うようになったそう。Aさんには弟がいるので、できれば貯金は弟に渡したいそうです。一人息子に自宅以外の資産を相続させないということは可能なのでしょうか?
林智慮

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

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遺言書を作成する

Aさんの奥さまは5年前に他界しています。そのため、このまま何もしない状態でAさんに万が一のことがあると、Aさんの財産のすべてを一人息子が相続することになります。
 
自分の死後、「何を誰に」と特定の財産を特定の人に渡したい場合は、遺言書を作成する方法があります。その際、息子には土地と建物、Aさんの弟には預貯金を相続させる旨を記載します。その他の相続財産がある場合は、Aさんの弟が相続する旨も記載します。
 
ただし、法定相続分は民法で定められたものですが、絶対にこのとおりに分割しなければならないものではなく、遺産分割でもめたときの遺産持ち分であり、遺言書が優先されます。
 
遺言書には、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。自筆証書遺言の書き方のルールを間違えると、無効になってしまいます。法務局ホームページのひな形を参考にしてください。
 
また、自筆証書遺言保管制度を利用すると、改ざんや紛失を防げるし、家庭裁判所での検認手続きが不要になります。
 

遺留分に注意

ただし、第1順位の法定相続人である「子」には、最低限の取り分である遺留分として法定相続分の2分の1があります。今回の場合、お子さんには最低でも相続財産の半分を受け取る権利があります。
 
お子さんに土地家屋を、Aさんの弟さんにはそれ以外の財産を相続することをお考えですが、もし、土地家屋の評価額がその他の相続財産より低い場合は、遺留分が侵害されていることになるため、お子さんは遺留分侵害請求ができ、金融資産を手にすることになります。
 

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相続人廃除とは?

お子さんの金銭トラブルに長年悩み、もう絶対に相続させないという場合は、相続廃除を家庭裁判所に申し立てるという方法もあります。
 
「遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。」(民法第892条)(引用:e-GOV法令検索 民法)
 
ここで、お子さんの金銭トラブルが「著しい非行」に該当し、相続人の廃除が認められれば、お子さんは相続人でなくなり遺留分もなくなります。遺言書による廃除の意思表示も可能です。遺言執行者が遅滞なく家庭裁判所に請求しなければなりません(民法第893条)。
 
一度廃除したら二度と相続人に戻せないことはなく、廃除を取り消すこともできます(民法第894条)。
 

一度決めても変更できる

現在は、長年の金銭トラブルから、数十年、お子さんとの関係があまり良くない状態ですが、年月が過ぎて行くにつれ関係性に変化が生じることがあります。
 
本来、お子さんは全部の相続財産を受け取れるのです。今は親子の関係性が良くなくても、金銭トラブルもなくなり関係性が良くなる場合、やはり全部の資産を相続させてもいいのではと思うようになるかもしれません。
 
遺言書を作成した後で、やはりこうしたいと内容を書き換えたい場合、遺言書を新たに作成します。日付の新しいものが有効です。
 
反対に、家も残したくないくらいに関係性が悪化したときには、廃除を請求することになる場合もあるでしょう。取り消すことができますが、相続する権利を剝奪するものです。慎重に行いましょう。
 

まとめ

たった一人のお子さんです。お子さんの相続分を制限するには遺言書の作成、相続させないようにするには相続人廃除がありますが、お子さんの状況、Aさんとの関係性の変化に合わせ、新たに遺言書の作成、廃除の取り消しをするなど、柔軟に対応をしましょう。
 

出典

国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
法務局 法定相続人 (範囲・順位・法定相続分・遺留分)
法務局 函館地方法務局 自筆証書遺言書の文例集
e-GOV法令検索 民法
 
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者

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