結婚に関するお金をもらった場合は贈与税が「非課税」になると聞いたのですが、新居に住むための費用に充てても対象になりますか?
このとき、「結婚資金として贈与を受けた場合は贈与税が非課税になる」と聞いたことがある人も多いでしょう。では、そのお金を新居の購入やリフォーム費用に充てた場合も、非課税の対象となるのでしょうか。
本記事では、結婚関連の贈与税の特例制度について適用範囲や注意点を整理します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
結婚・子育て資金の一括贈与制度とは
贈与税には、「結婚・子育て資金の一括贈与制度」という特例があります。これは、両親や祖父母などの直系尊属から、子どもや孫が結婚や育児のために使う資金として贈与を受ける場合、一定額までを非課税とする制度です。
受贈者の年齢(18歳以上50歳未満)や所得(前年1000万円以下)に制限があり、贈与を受けた資金は専用の結婚・子育て資金口座を通じて使用しなければなりません。
この制度の目的は、若い世代の結婚や出産、子育てを経済的に支援することにあります。ただし、すべての支出が非課税になるわけではなく、制度で定められた「対象となる支出」に該当する場合に限られます。
支出内容を証明するための領収書の提出も義務付けられており、利用者はこれらのルールに従うことが求められます。
非課税となる支出の範囲
この制度で非課税となるのは、結婚や出産、育児などに直接関連する支出に限定されています。例えば、結婚式や披露宴、婚礼衣装の費用、婚姻届の提出に伴う費用、引っ越しや賃貸契約にかかる敷金・礼金などが代表的です。
制度上は贈与額の上限が設けられており、結婚に関する支出部分には300万円の限度があります。一方で、日常生活の費用や家具・家電の購入、衣類などの一般消費は対象外とされます。したがって、どの支出が該当するかを事前に確認しなければ、非課税枠を超えた部分に贈与税が課される可能性もあります。
新居取得やリフォーム費用は対象になる?
結婚・子育て資金の一括贈与制度で非課税となるのは、挙式費用や引っ越し費用、賃貸契約に伴う敷金・礼金など、結婚に直接関わる支出に限られます。一方で、住宅の購入代金や建築費、リフォーム費用といった「住まいそのもの」に関する支出は対象外です。
ただし、直系尊属(両親や祖父母など)からの贈与であれば、別制度である「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度」が利用できます。
この制度では、18歳以上の子や孫が住宅を新築・取得・増改築するため受け取った資金を対象とし、省エネ等住宅の場合は最大1000万円、その他の住宅は500万円までが非課税となります。
したがって、新居の購入や住宅の改修に充てる資金については、「結婚・子育て資金の一括贈与制度」ではなく、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度」を選ぶのが適切です。両制度の目的や適用範囲を正しく理解し、重複や誤用がないよう注意しましょう。
制度を利用する際の注意点
住宅取得等資金の非課税制度を使う際には、複数の要件のうち一つでも満たさなければ非課税の適用が認められません。
まず、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与金の全額を住宅の取得・建築・増改築に充てなければなりません。
また前述のとおり、受贈者は贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上である必要があり、贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円(住宅新築等の対象となる家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満である場合は1000万円)を超えないことが求められます。
住宅そのものについては、床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下であること、省エネや耐震など一定の性能基準を満たすこと、増改築工事においては工事費用が100万円以上であることなどの条件が課されます。
さらに、贈与を受けた翌年3月15日までに居住しなければならず、この要件を満たさないと非課税が取り消され、贈与税がさかのぼって課せられる可能性があります。
これらの要件を十分に確認せず制度を利用すると、非課税の恩恵を受けられないばかりか、余分な税負担を負うことになるため十分注意が必要です。
制度を理解して、正しく活用しよう
結婚を機にまとまったお金を贈与されるのは喜ばしいことですが、その使い方によっては贈与税の対象となることがあります。特に、新居購入やリフォームに使う場合は、「結婚・子育て資金の非課税制度」ではなく、別の「住宅取得資金の非課税制度」に該当する可能性があるため注意が必要です。
まずは、自分のケースでどの制度が使えるのかを整理し、それぞれの適用条件を正確に把握しましょう。制度の仕組みを理解し、領収書や契約書などの証憑(しょうひょう)書類を適切に管理することで、税制優遇を無駄にすることなく安心して資金活用ができます。
贈与を受けるときは、制度の目的と適用要件をしっかり理解したうえで、将来の生活設計を見据えたお金の使い方を心掛けましょう。
出典
国税庁 No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
国税庁 父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー