母のタンス預金「300万円」を盗まれるのが怖いから預かってと頼まれました。私の口座でいったん管理しているのですが、贈与になりますか?
そのため、タンス預金をしていた親から「盗まれないようにいったん預かって管理してほしい」と言われることもあるでしょう。預かったお金は、管理状態によっては贈与扱いになる可能性があるため、注意が必要です。
今回は、親のお金を自分の口座に入れると贈与になるのか、また、親子間でのお金のやり取りで贈与になる可能性があるものなどについてご紹介します。
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親からの贈与と判断されないためには証拠が必要
お金を親から預かるだけであれば、基本的に贈与にはなりません。
民法第549条によると「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と示されているためです。
あくまで親のお金を預かるだけであれば、無償で財産を受け取るわけではないため、贈与とは判断されないでしょう。ただし、「親のお金を管理しているだけ」という証拠が必要です。もし親のお金を自分のお金とまとめて管理していると、贈与されたお金として判断される可能性があります。
今回のケースで300万円がすべて贈与されたと判断されると、基礎控除(110万円)を超えた190万円が課税対象です。国税庁によれば、この場合税率は10%なので、19万円の贈与税を支払うことになります。
課税されないためには、預かったお金であるという預かり証を作成するとよいでしょう。預かり証には、預かった金額や人物、日付などを記載することで、贈与ではない証明になります。
また、自身の口座とは別で親のお金を管理することで、間違って使ってしまうことを防げるでしょう。こうした対策をしていれば、親からお金を預かっても基本的に贈与扱いとはみなされません。
親子間のお金のやり取りで贈与になる可能性があるもの
お金を預かる以外にも、以下のような場合は対応を間違えると贈与扱いになる可能性があるため、注意しましょう。
例えば、親子間での借金は、返済状況などに応じてお金の貸し借りか、実質的な贈与と判断されるかが変わります。国税庁によると、「ある時払いの催促なし」や「出世払い」でよいとした親子間の借金は、実質的には贈与とみなされます。
借りたお金の金額分を贈与されたとして、金額によっては税金が課されるでしょう。また、返済はするものの無利子の場合は、利子相当分を贈与されたと判断される可能性があります。
ほかにも、税金を代わりに支払った場合は、その税額分を贈与したと判断されるでしょう。ただし、いずれの場合も年間の基礎控除110万円を超えなければ課税されません。
預かったお金を使用する際の注意点
親の急な病気やけがにより、預かったお金を使用する場面が出てくるかもしれません。もし親のために使用したときは、必ず領収書などで使用用途を明確にしておきましょう。
領収書などの証拠がなければ、使用した金額分が本当に親のために使われたのか、子どもが私的に使用したのか判断がつかないためです。領収書には、使用目的や日付も記載してもらいましょう。
なお、お金を預かったままで親が亡くなると、そのお金は相続財産として扱われます。親が遺言書で預けたお金をそのまま子どもに渡すと書いていれば、お金を管理していた子どもが相続するでしょう。
しかし、遺言書がなければ、預かっていたお金はほかの遺産とともに相続人全員で分けることになります。
預かるだけなら課税されないが書面に残した方がよい
親からお金を預かるだけなら、基本的に贈与とはみなされません。贈与は、双方合意のうえで無償で財産を譲り受けることを指すためです。ただし、受け取ったお金を自分のために使用すると、通常の贈与と判断される可能性があります。自分のお金とは分けて管理することがおすすめです。
なお、あくまで預かったお金だと示すためには、預かり証の作成などで書面に残すとよいでしょう。税務署から指摘されても、書類を見せることで預かったお金であることが証明できます。
出典
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第三編 債権 第二章 契約 第二節 贈与 第五百四十九条(贈与)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4420 親から金銭を借りた場合
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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