夫の給与を元手に「専業主婦」の自分名義で“年120万円”のNISA投資をしたいです。目的が「将来の生活費」でも“贈与”になると聞きました。夫婦間でも課税されるのでしょうか?
「夫婦間のお金は共通の財産だし、NISA投資のお金は将来の生活費に使うものだから問題ないはず」と思うかもしれませんが、資金の出どころが夫の給与である場合、贈与税がかかる可能性があるのです。また、NISAの利益であっても扶養の判断に影響することもあります。
本記事では、NISAが贈与税や扶養判定にどう影響するのか解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
生活費や教育費には贈与税がかからないが……
通常、夫婦間の生活費の贈与について贈与税はかかりません。国税庁もWebサイト上で、夫婦や親子などの扶養義務者から渡される財産のうち生活費や教育費にあたるものは贈与税がかからない財産であると明記しています。ただし、生活費であれば全ての贈与が非課税になるわけではありません。
生活費や教育費が非課税とされるのは「必要な都度、直接支払われる場合」に限られます。先述の国税庁のサイトでも「生活費の名目で受け取ったお金を預金しておき、そのまま株式や不動産の購入資金に充てた場合は贈与税の対象になる」とされています。
つまり、夫から生活費の名目で受け取っているお金であっても、NISAを使って金融商品の購入資金に充てている場合、たとえそれが将来の生活費に充当されるものであったとしても、贈与税がかかることに注意が必要です。
年間120万円の投資額に対する贈与税はいくら?
夫婦間であっても、年間110万円を超える贈与があった場合は贈与税を納めなければなりません。例えば、年間120万円の贈与があった場合は、基礎控除110万円を除いた10万円に贈与税が課税されます。
贈与税は贈与額が増えるにつれて税率が上がる超過累進課税が採用されており、課税額が200万円以下の場合の税率は10%なので、このケースでの贈与税は1万円です。
贈与税の支払いを避けたいのであれば、夫からのお金の受け取りを例えば「毎年108万円(9万円×12ヶ月)」といった具合に、110万円未満に抑えるのも良いでしょう。
ただし、毎年同じ金額を継続して贈与すると「定期金給付契約に基づく贈与」とみなされることがあります。毎年108万円を贈与し続けた場合、税務署は「108万円を5年間贈与する権利を初年度に贈与した」と判断する可能性があるのです。
この場合、初年度に「108万円×5年=540万円」を一度に贈与した扱いとなり、基礎控除110万円を差し引いた430万円に課税されます。夫婦間で課税額が400万円~600万円以下の贈与をした場合の計算式は「基礎控除後の課税価格×20%-30万円」なので、贈与税額は56万円にもなります。大きな金額に驚くのではないでしょうか。
妻名義のNISA投資で利益を得たことで、夫の扶養から外れる可能性はある?
専業主婦で、自分名義でNISA投資をしている妻の中には「NISAで得た利益が扶養判定に影響するのでは?」と不安に思う人もいるかもしれません。社会保険上の扶養は年収130万円未満が原則ですが、投資の利益をこの「年収」に含めるかどうかは健康保険組合によって判断が異なります。
注意点は、恒常的に続く収入であれば、課税・非課税を問わず収入とみなされる場合があることです。NISAによる利益も恒常的と認められるものは収入とみなされ、扶養の判断に影響を与えるということになります。
もちろん、NISAの利益だけで扶養から外れることは現実的にはほとんどありません。株を100万円で買って230万円で売却したといった具合に、130万円の利益が出たとしても、それは一度きりの収入なので恒常的な収入とは判断されないでしょう。
また、NISAの利益のうち「配当」は毎年得られる収入に近い扱いになりますが、配当だけで年間130万円を超えることは現実的ではありません。
とは言え、例えば将来パートに出た場合などは、給与収入とNISAの利益(配当)を合算して130万円を超える可能性はあるため、扶養判定に影響が出るかもしれないということを頭の片隅に置いておくと安心です。
生活費名目でも投資は贈与税対象。知らなかったでは済まないので注意が必要
夫から妻に生活費や教育費を渡すことは贈与税の対象外ですが、夫からのお金を妻名義のNISAの投資資金に回した時点で課税の対象になります。それがたとえ「将来のための生活費」に充当するものだとしても、です。
また、NISAの利益だけで扶養を外れる可能性は低いものの、制度を理解せずに利用すれば思わぬ負担につながりかねません。「将来の生活費のための投資だから大丈夫」と安易に考えず、贈与税や扶養の基準をふまえて計画的に運用することが大切です。
出典
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士