子ども名義で毎月1万円ずつ貯めていた口座が、100万円を超えました。子どもが社会人になったら渡す予定ですが、渡すときに贈与税はかかりますか?
贈与税は、親子間のお金のやり取りでも発生する可能性があります。思いがけず課税され、渡す分が少なくなってしまう事態を防ぐためには、事前に贈与税のルールを把握しておきたいところです。
本記事では、今回の事例で課税されるのかどうかはもちろん、贈与税がかかるのはどんな場合かもあわせて簡単に解説します。
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
贈与税は年間110万円を超える贈与に対してかかる
贈与税について考えるとき、まず覚えておきたいのが「110万円」という数字です。贈与税の基礎控除の金額で、この基準を超えた分に対して税金がかかるのが原則です。
年間110万円までの贈与なら、贈与税はかかりません。しかし、何をもってどの段階で贈与したとみなされるのか、よく確認しておきましょう。
親が子ども名義の口座で代わりに貯金をしていると、「名義預金」とみなされる可能性があります。名義預金の場合、子どもの口座に入っているお金であっても親の資産としてカウントされるため、最終的に子どもに渡すときに贈与が成立したとされます。
今回の事例は「今まで子ども名義で積み立ててきて、今は100万円貯まっている」状態ですが、子どもがこの口座の存在を知らない場合や、実際の管理を親が行っている場合、名義預金となるでしょう。
そのため、贈与が成立したとみなされるのは「積み立てのタイミング」ではなく、「最終的に子どもに渡すタイミング」になります。
つまり、「月1万円ずつの積み立て=年間12万円の贈与だから無税」とはなりません。また、現時点で貯まっている100万円をすぐに渡すなら、基礎控除の範囲(年間110万円以内)に収まるため贈与税はかかりませんが、渡すときに110万円を超えるようなら注意が必要です。
贈与税がかからないように子どもにお金を渡す方法は?
子ども名義で貯めたお金は、名義だけで判断するのではなく、「実際に誰が管理しているか」「子どもが自由に使える状態か」がポイントになります。
贈与税がかかるのを避けたいなら、親ではなく、子ども自身が口座を管理する方法があります。名義預金(実質の管理者は親)ではなく、実際に子どもが管理して利用している口座であれば贈与税はかかりません。
子どもの年齢などにもよりますが、ある程度理解できるようになった段階で口座の存在を明かし、子ども自身がいつでも引き出したり預けたりできるようにしておくのも一案です。
その際、お金の使い方のルールなどを一緒に決めておけばよい金銭教育の機会になるかもしれません。ちなみに以下のような場合は、条件を満たすと年間110万円を超える贈与であっても非課税になる特例があります。
●子どもの結婚・子育て資金を贈与した場合(最大1000万円まで)
●子どもが住宅を取得するための資金を贈与する場合(最大1000万円まで)
●孫の教育資金を一括贈与した場合(最大1500万円まで)
また、親が子どもの生活費や学費を支払ってあげる場合は贈与とされず、非課税とされています。贈与税の負担が心配なら、名義預金を社会人になってから渡すのではなく、こうした目的で使うことも検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回のように、親が貯めて管理しているお金を将来まとめて渡す場合、贈与税がかかる可能性があります。ただし、「渡した時点」での金額が基礎控除の範囲内(年間110万円以内)であれば、心配は不要です。
110万円を超えそうな場合は、子ども自身が口座を管理するようにしておくか、非課税措置を利用するなど、税金がかからないよう対策しておくとよいでしょう。
受け渡しのタイミングや目的、金額などに応じて課税されるかどうかや税額が変わってくるため、不安な場合は税務署や税理士に確認しておくと安心です。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 財産をもらったとき
執筆者 : 馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表